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肌寒い季節が到来し、そろそろ暖房機器の準備を始めている頃だろう。これまでは家にある機器をなんとなく使っていたかもしれないが、暖房機器の選び方や使い方次第で、効果や省エネ度合いは大きく変わってくる。暖かくしたい空間の広さや対象など状況に合わせて使い方を工夫してもらいたい。
まずは広い空間を暖めたい場合だ。当たり前だが、どんな機器でも最大出力で運転する時間が長ければ長いほど、多くの電力を消費する。長時間暖かさを保ち、かつ省エネするには、この最大出力の時間をいかに短くするかがポイントになる。

大空間、長時間の運転という点で最もお薦めしたいのが、エアコン暖房だ。エアコンは起動時に大きな電力を消費するものの、設定温度になった後は自動車の5速運転のように、少しのエネルギーで室温を維持することが可能だ。そのため他の暖房機器とは異なり、小まめにスイッチのオンオフを繰り返すよりも、1時間程度の比較的短い外出時間であれば、自動モードでつけっぱなしにしていた方が効率良く運転できる。エアコンは、適切に活用すれば他の暖房機器と比べて最も省エネ性能が高いと言えるだろう。
ただ室内環境によっては、エアコンが不快の原因となる場合もあるので、適切に対応したい。まず一般的には空気が乾燥しやすくなるので、湿度が40%以下になるようであれば、洗濯物を室内で干したり、入浴後の浴室のドアを開けっ放しにしたりして湿度を上げてみよう。もしどうしても乾燥して困るという場合は、加湿器を使うという選択肢もあるだろう。
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またエアコンは、何年も掃除しないまま使っていると内部でカビが発生し、有害な空気が吹出口から放出される可能性もある。できれば毎年、少なくとも3年に1回は清掃したい。数年に一度の大掛かりな清掃は、清掃業者への依頼も検討したい。
次に、灯油やガスを使ったファンヒーターだ。スイッチを入れるとすぐに勢いよく温風が出て、小さな部屋ならすぐに暖めることができる。また、エアコンほどではないが、省エネ性能もそれほど悪くはない。そのため、断熱性能の高くない日本の一般的な住宅では便利な存在だ。ただし排気口があるタイプを除けば、灯油やガスを燃焼させるファンヒーターは、原理的には家の中で焚き火をしているのと同じになるため、以下の2点を注意してほしい。
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ひとつは、室内の空気の悪化だ。燃焼により二酸化炭素など汚染部室が放出されるため、ファンヒーターには必ず1時間に1〜2回、窓を開けて換気するようにという注意書きがされている。真冬にそのとおりにすると寒くてたまらないので、指示を守っている人は少ないはずだが、長時間換気せずに使用し続けることは健康リスクを高めることは知っておいたほうがいい。
もうひとつは、燃焼により水分が発生して湿度を上げることだ。乾燥していた部屋が適切な湿度になるくらいまでは良いだろうが、窓などには結露が発生しやすくなり、カビやダニの増殖の原因にもなる可能性があるので注意したい。
その性質を逆手に取った上級者向けの使い方として、エアコンとの併用も考えられる。エアコン暖房単体では乾燥しすぎてしまうという場合に、ファンヒーターとうまく併用して湿度をコントロールしながら部屋を温め、空気の悪化も最小限にするという方法だ。なお気密性能の高い住宅では、ファンヒーター使用時にある程度の換気をしたとしても、空気の汚染や結露の発生がひどくなる。絶対に使用しないでほしい。