アルゼンチンに続いてボルソナロが関心のある国がチリである。
政権に就いてからチリを訪問する旨を彼は既に表明している。その関心の強さは前述したオニックス・ロレンゾニがチリの代表紙『
LA TERCERA』のインタビューの中で次のようなことを語っていることから推察できる。
「チリは我々にとって堅固なマクロ経済を築いた参考になる国である。ラテンアメリカにおいて異なった国と成ることが出来た。大統領についての職務について我が国のものよりより整えられたものになっている。教育に関してのプロジェクトも質が高い。だから、チリは我々のお手本になる国である」
「我々はボルソナロをリーガン元大統領と比較の対象にしたい」
「ブラジルと同じような状況にあった米国を彼は救出した。その為に彼はベストな人材を主要な省に起用した。ミルトン・フリードマンはアメリカ経済の指揮者となった。そして米国経済を回復させた。我々の比較はリーガンとであってトランプとではない」
「韓国、日本、イスラエルなどの国々との関係を確立させたい。経済や新しいテクノロジーの分野において先端を行っている国々に近づくことである。ブラジルは広大で豊富な資源資源を持っている。が、新しいテクノロジーに多大の投資をすることが必要なのである」
これらの発言をしたオニックス・ロレンゾニは、ボルソナロの政権が誕生した際に首相になる可能性が一番高いとされている人物である。
次に関心のある国はコロンビアである。
ベネズエラにチャベス、ブラジルにルラが登場してラテンアメリカが左派色に染まっていた時も、コロンビアは常に右派政権を保っていたラテンアメリカの主要国のひとつである。しかも、ブラジルとも国境を接している。ベネズエラが食料難など深刻な経済危機に襲われている現段階でベネズエラからの移民が一番多く流入しているのがコロンビアそしてブラジルである。
コロンビアの伝統紙『
EL ESPECTADOR』(10月28日付)は紙面のタイトルからして「コロンビアはブラジルの大統領として勝利したボルソナロを祝福する」とつけた。そして、記事では<ブラジルが進むべき道を変えることを約束し、社会主義と極左からの影響を根こそぎ抜き取ってしまうことを誓った>と報じている。
また、同日付けのもう一面の記事ではタイトルに「ブラジルは軍人の手に戻った」と付けて、ボルソナロは国防省、科学テクノロジー省、運輸省にそれぞれ軍人を閣僚として起用する意向であることを報じた。更に、同紙はブラジルの議会で22人の元軍人が議員として選ばれたことを報じ、行政府の58のポストに退役軍人が就くことも明らかにした。
また、ジェトゥリオ・バルガス財団とサンパブロ大学法学部による世論調査で、ブラジルの国民の56%が軍部を信頼し、ブラジルの議会への信頼は僅かに7%しかないということが明らかにされていることも報じた。(参照:「
El Espectador」)
ブラジルは昨年だけでも63880人が殺害されている国である。暴力犯罪が横行しているブラジルでは、必要とあらば軍部がその解決に当たるということを強調している元軍人のボルソナロに市民が信頼を寄せているのである。
またコロンビアの別紙『
EL TIEMPO』(10月29日)は、紙面に「ブラジルを救出して平穏にする」というタイトルを付けた。そして、ボルソナロの勝利宣言の中で彼は憲法、民主主義、自由の守護者になることを神の前に宣誓すると誓ったことを報じている。
ちなみに、意外なのはラテンアメリカでもう一つの大国メキシコでのボルソナロの勝利に関係した報道が比較的少ないということである。メキシコもこの12月にアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドールが大統領に就任することになっている。彼が率いる政党はこれまで70年以上メキシコをリードして来た2大右派政党ではなく中道左派政党だ。