下流の肱川大和集落から見た鹿野川ダム 撮影地点は、標高50mで、鹿野川ダム堤頂部は標高91m。写真右は、肱川大和団地。護岸が破壊され、道路も洗掘によって大きく損壊している。2018/10/20撮影
被災箇所はあれど大きな氾濫跡は見られなかった黒瀬川流域
愛媛県道29号線が災害により閉塞している為、愛媛県道35号野村城川線を経由して、
黒瀬川沿いにでます。黒瀬川は肱川水系の支流で、鹿野川ダム湖に注ぎます。国道197号線は、県道35号線との合流点より15km程上流の城川町高野子(しろかわちょうたかのこ)から黒瀬川沿いに走ることが出来ますので、一旦黒瀬川上流まで遡りました。
黒瀬川上流から川沿いに下ると、途中土砂災害による被災箇所を幾つも見ますが、黒瀬川そのものには大きな氾濫跡は見られません。地元の方にお話を伺うと、概ね次のような答えでした。
「あちこちで山が崩れて道路が寸断された為、避難はどこにも出来なかった」
「ものすごい雨音で、防災行政無線は聞こえなかった」
「三日ほど電気が来ずに情報が入らなかった」
「水道が長期間断水してたいへんだった」
「山から水と土砂が溢れてきたが、川(黒瀬川)からは水は溢れなかった」
「こんなことが起きるとは思いも寄らなかった。まさかこんな天災に見舞われるとは」
「野村と大洲はもっと酷い有り様で、こちらはまだましだ」
前回お伝えした野村ダム下流の肱川では、二階まで浸水するような
川の氾濫と土砂災害に見舞われていましたが、黒瀬川では主に
山からの水と土砂に見舞われていたことが対照的です。
増水していたとは言え、越水しない程度だった黒瀬川も、肱川との合流点が近づくと急速に水位をまして行きます。これは、肱川と鹿野川ダム湖によるバックウォーター(背水)の為と考えられます。
黒瀬川は、上流にダムはなく、下流に鹿野川ダムがありますが、バックウォーターを生じていたと思われる地点を除き、大きな氾濫の痕跡は見られませんでした。
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西予市城川町 宝泉坊(ほうせんぼう)ロッジ前から西方を望む 右前方の山から土砂が流れ込み、被災した。クアテルメ宝泉坊など温泉、プール施設は機器被災により現在も休止中。宿泊、食事施設は復旧し営業再開している。2018/10/20撮影
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西予市城川町 宝泉坊ロッジ前から黒瀬川上流を望む。肱川との合流点から13キロ上流。黒瀬川は大きな氾濫を起さなかったとのこと。この付近では、他にも土砂崩れが起きている。 2018/10/20撮影
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道の駅きなはい屋しろかわより黒瀬川を望む。肱川との合流点から8キロ上流。地元の方によると、擁壁を越水することはなかったとのこと。 2018/10/20撮影
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道の駅きなはい屋しろかわより西方を望む。黒瀬川の氾濫や冠水はなかったとのこと。但し、河岸左手の山上にある簡易水道の水源が土砂災害で破壊され、陸上自衛隊による復旧作業支援が終わる8月上旬まで断水したとのこと。 2018/10/20撮影
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この取材では、197号線(中央の赤線)を右下(高知県側)から左上(大洲市側)へと移動している。左上の点線(栗の木トンネル)手前で肱川と黒瀬川が合流している。 2018/10/20撮影
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四国電力嘉喜尾測水所付近から黒瀬川を望む。肱川との合流点から4キロ上流。植生の破壊から、水位が8~9mまで上がっていたことがわかる。肱川からのバックウォーター(背水)が起きていたと思われる。この地点のはん濫注意水位は8m強。 2018/10/1撮影