厚労省の高プロ制紹介に見る欺瞞。政府は、野党の次は国民を騙しにきた

「自由な働き方」ではない高プロ

 国会審議に注目してきた方なら、ご存知だろう。高プロが「自由な働き方」などではないことが。  国会パブリックビューイングの国会審議解説映像「第1話 高プロ危険編」(参照:映像文字起こし)でも紹介した通り、石橋通宏議員は6月26日の参議院厚生労働委員会でこう指摘していた。法案が成立する3日前のことだ。 【石橋通宏議員(立憲民主党)】 ”これ(注:高プロのこと)、本当、誰のための制度なんですか。誰に要望されて、誰のために設計された制度なのか。  総理、この委員会でも明らかになりました。元々、産業競争力会議からの提案ですと。長谷川さんや竹中平蔵さんですよ。あの方々が提案した制度なんだと、これは加藤大臣も認められたわけです、この場で。昨日の予算委員会でも、総理、それ認められておりますね。びっくりしました。  ということは、これまで総理が言ってきた、これは働く者のための制度なんだ、自由でやりがいがある働き方なんだ。誰がそんなこと言ったんですか。  企業のための、企業による、そういう制度なんだ、総理、そのことをもし認められるのであれば、これまでの説明はうそです。であれば、立法事実、根拠がありません。是非、それを認めるのであれば、ここで撤回してください。総理、いかがですか。”  高プロは働く者のための制度だと政府は主張してきたが、それを裏付けるデータはなかった。労働者のヒアリング結果と言われたものも、後付けで行われたものだった。実際のところは、労働者のニーズに基づく制度ではなく、長谷川閑史氏(武田薬品工業社長・当時/経済同友会代表幹事・当時)や竹中平蔵氏(慶應義塾大学教授・当時/パソナ会長)らがメンバーとなっている産業競争力会議が制度創設を求めたものだった。  この産業競争力会議には、労働側の代表はメンバーに含まれていない。高プロの創設や裁量労働制の拡大を求める経済界の意向が、産業競争力会議で取りまとめられ、「日本再興戦略改訂2014」として閣議決定され(2014年6月24日)、厚生労働省に押し付けられた、というのが実際の経過だ。  経済界が求めるものでありながら、あたかも労働者が求めるものであるかのように国会に提出された、それが高プロだ。そしてその欺瞞が野党の指摘によって暴かれ、安倍首相は最後には開き直って経済界からのニーズに基づくものであることを認めた。にもかかわらず、法成立後に厚生労働省が作成したリーフレットで、同じ欺瞞がまた改めて繰り返されているのだ。国会審議における野党の追及など、なかったかのように。
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高プロで自由になるのは労働者ではなく管理者
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