電気とは少し離れるが、調理もエネルギーを多く使う分野だ。お薦めしたいのは、普段使う鍋類などを熱伝導率の良いものにしておくことだ。保温力はそれほどなくても、すぐに温まる鍋をガスコンロなどと組み合わせて使えば、カセットボンベの省エネにつながる。土鍋など保温力の高い鍋は、温めるまでに時間がかかるので非常時には向かない。
太陽の熱で調理するソーラークッカーもお薦めだ。お湯を沸かしたり卵を茹でたりするレベルのものから、本格的な鍋料理ができるものまで、さまざまなサイズ、コストがある。
使えるのが太陽の出ている昼間だけというのが難点だが、それでも場合によっては役立つだろう。最近はコンパクトで熱効率も良い機器が割安で手に入るようになったので、非常時になる前にアウトドアなどで一度使ってみて欲しい。
もともとインフラのない場所の活用を前提としているさまざまなアウトドアグッズは、いざというときの備えになる。例えば、小さな枝を燃料にして煮炊きできる調理器具や、さらに燃焼中に携帯電話などの充電もできる器具も1万円前後の価格で手に入れることができる。
屋根に設置して太陽の熱でお湯を作る太陽熱温水器は、普段からガスの消費を減らしてくれるコスパの良い省エネ機器だ。東日本大震災のときには、ガスと電気が止まっていても、水さえ出れば温かいお風呂に入れたということでとても重宝された。コストも20万円台からと、ソーラーパネルよりずっと安く、災害への備えとしても使えることははっきりしている。
最後に、アルミでできたロールマットは、床からの冷気を防いでくれるので、家族の人数分備えておきたいところだ。普段も、絨毯やホットカーペットなどの下に敷くことで熱効率が良くなり温度低下を防いでくれる優れものだ。
普段はあまり意識しないが、いざ止まったら大変な思いをすることになるエネルギー・インフラ。日頃からある程度意識してグッズを準備していくことが、いざというときも安心な暮らしをつくるはずだ。
◆ガマンしない省エネ 第6回
<文/高橋真樹>
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。環境・エネルギー問題など持続可能性をテーマに、国内外を精力的に取材。2017年より取材の過程で出会ったエコハウスに暮らし始める。自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画
『おだやかな革命』(渡辺智史監督・2018年公開)ではアドバイザーを務める。著書に『
ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)『
ぼくの村は壁で囲まれた−パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)ほか多数。