震災対応で問われる安倍政権の危機管理の意思と能力

疑惑の隠ぺいに震災を利用していないか

 なぜ、政府与党はこのように災害対策の基本に反する行動・選択をしたのでしょうか。論理的には、3つの可能性が考えられます。  第一の可能性は、危機管理の能力の欠如です。災害対策の基本を首相や閣僚、与党幹部が理解しておらず、情報の得にくい場所にいても問題ないと認識していれば、能力の欠如となります。また、危機管理監や他の幹部官僚も、基本を理解していなかったか、理解していても進言しなかったか、あるいは進言を受け入れてもらえなかったのか、いずれかになります。  そうであれば、政府のトップにおける危機管理の問題として、経緯を詳細に検証しておく必要があります。検証して制度や体制に問題があるならば、早急に改善しなければなりません。閣僚への危機管理研修を義務づける必要が出てくるかも知れません。いずれにしても、今後の教訓とするために、検証が必要となります。  第二の可能性は、震災対応よりも国会対策を優先したという、危機管理の意思の欠如です。国会は会期末を控え、審議日程が窮屈になっています。与党は、1か月程度の国会延長を想定しているといっても、高度プロフェッショナル制度やカジノ法案には、野党や世論の反発もあり、時間はいくらあっても足りないはずです。首相や主要閣僚が出席する機会は、何度となく取れるはずもありません。  そこで、政府与党の幹部が、政府の震災対応がおろそかになる恐れに目をつむり、国会対策の都合を優先した可能性が考えられます。その場合、直接の責任者は、政府の国会対策責任者の菅義偉官房長官、与党の同責任者の森山裕自民党国会対策委員長、大口善徳公明党国会対策委員長となります。  第三の可能性は、震災の報道が相対的に大きくなることにより、参院決算委員会の報道が小さくなることを狙ったことです。この場合は、震災に便乗して「モリ・カケ」問題の報道を小さくしようとしたことになり、上記2つの可能性よりもさらに悪質です。あれだけの震災ですから、翌日の報道も震災一色になることは、容易に想像がつきます。  まさかと思いますが、翌19日の加計学園の加計孝太郎理事長による突然の記者会見が、その可能性の傍証になっています。朝9時に突然、当日11時からの加計理事長による記者会見が、学園から公表されました。場所は、岡山市の同学園。加計学園問題を継続的に取材してきた東京や大阪のジャーナリストは、間に合いません。辛うじて、松山のジャーナリストがギリギリ間に合うか、間に合わないかというタイミングです。間に合っても、出席は地元記者に限定されたと報じられていますので、出席できませんでした。翌日の報道も、震災のために、相対的に小さくならざるを得ません。  もし、この第三の可能性であれば、安倍政権や加計学園が震災を利用して、疑惑の隠ぺい・矮小化・幕引きを狙っていることになります。
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隠ぺいしても「モリ・カケ」は収束しない
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