驚くほどお金を使うことが少なくなったが、何も困ることがない
自作の机と、知人が描いた雑草の絵。壁は後に漆喰を練って塗った
買い物をしても物価が安い。新鮮な地元野菜を扱っている店に行くと、感覚としては都会の価格の半額ほど。親しい有機農家さんを訪ねれば、安いうえにオマケが多い。畑から直接摘んで「これ全部でおいくらです?」「え~と、そうだね。じゃ、500円もらおうか」「え、そんなに安いんですか!」「こっちに余っている野菜もあるから、好きなだけ持っていって」という具合だ。
外食することも少なくなった。酒を喰らって語り合いたいなら、誰かの家に手作り料理を持ち寄って、良い酒を飲んだほうが、美味くて安心で自由だ。俺の場合はストレスが少なくなり、「酒を呑まずにいられない」なんてことがなくなった。飲んでも味わい楽しめる。
部屋やトイレやキッチンの洗剤類、シャンプーや歯磨き粉、薬も買わない。歯磨きは塩が一番いいし、石鹸は作ればいいし、薬草は外に山ほどあるからそれらで薬を作る。これらはもっぱら妻が得意としている。
紙類も、福祉施設が作っているエコなトイレットペーパー以外は買わない。便箋やメモには、郵便物や仕事の資料など用が済んだ裏紙を使うし、届く封筒を再利用するし、ティッシュはトイレットペーパーを代用すればいい。ちなみにプリンターも持っていない。必要あらば、コンビニでプリントアウトすればいい。
我が家には家電製品が少ない。妻と私が1台ずつのノートパソコンとスマホ、私のパソコン用の小さなスピーカー、妻のドライヤー、2層式のシンプルな洗濯機、冷蔵庫、炊飯器。寒い時期はコタツと便座。あとは部屋ごとの照明くらいか。テレビは昔から持っていないが、情報は充分入ってくる。政治や経済界の常識はずれのくだらん話だったり、他人のマヌケな不幸話に振り回されたりといった、テレビ番組にムダな時間を奪われることもない。
たまに使うものとしては、お米の籾摺り&精米機、電動ノコギリなどのDIY電動道具が複数ある。
あるものを工夫して利用。モノも人手も、たいていの欲しいものがタダか安価で手に入る
LEDテープライトを小さなソーラー発電キットにつないで、壁から天井に貼ってみた。夜でも充分な明るさに
契約も少ない。インターネットはプロバイダーでなくスマホのテザリング。新聞は取ってない。保険類は自動車系と県民共済で充分。県民共済は月2000円だけだし、割戻金があるから実質は月に1500円に満たない。他の契約はプロパンガスと電気、水道のみ。
ガスの使用量も一般家庭より少ない。煮物は沸騰した鍋を布団に包む。そのほうがゆっくり味がしみる。外で自作のロケットストーブを使ってメシを作ることも多い。燃料は、紙ゴミや庭に落ちている枝、DIYで残った木片など何でも燃やす。冬の灯油ストーブや薪ストーブは、暖をとりつつコンロも兼ねるので焼き物も煮物も蒸し物もできるし、アウトドアのダッチオーブンも重宝する。
あるもので工夫すれば、解凍も温めも保温もできるし、パンもピザも焼ける。魚焼き器、トースター、電子レンジなど、役目ごとに機器は必要ない。
電気は、自然エネルギーの会社と契約している。他社より安いとか高いとかはどうでもいい。原子力と化石燃料による発電より、自然エネルギーを広げる会社を応援したいからだ。
自分でも少々は発電する。2枚の太陽光パネルとバッテリーをつなぎ、スマホ、ノートパソコン、スピーカー、部屋の照明(自分の部屋だけだが)などはこれで足りる。
家賃はない。8年前に1000万円で買った中古の家だ。ただし、悲しいかな修復より劣化のほうが早い。けれど、自分で考え、自分で直し、少しずつ好みの家に変えてゆく。(ちなみに、知人の移住者たちは、庭付き畑つきの空き家を月1万~3万円で借りてDIYしてオシャレに暮らしている)
家に飾りは少ない。妻が自分で作ったものや、外に咲いた名もない花などが部屋やトイレに添えられる。
私の部屋には、小さなタンスと自作の小さな机とギター、そして先述したソーラーキットがあるのみ。ちょっとした合間に下手くそなギターをつま弾く。妻の部屋にはベッドと私が作った机しかない。(押入れにはモノや服は多々あるが)
車はタダでもらった軽バンだ。なので以前の7人乗りミニバンは友人にタダで譲った。ガソリンは思ったほどかからない。地方では車は必需でほぼ毎日乗るが、2週間で5000円くらいか。仕事で1週間ほど東京で過ごすと電車代が6000円かかった。車移動はエコではないが出費は少ないと思う。
地域の友人知人のつながりがあると、たいていの欲しいモノがタダか気持ち程度のお礼で手に入る。モノだけでなく人手が必要な作業も、互いに気軽に手伝い合ってコストがかからない。