東京・中野区で「オリンピックのために」樹齢100年を含む中高木470本が伐採。低木1万7450本はなんと「産廃」扱い

公園は今(5月13日撮影)

5月13日の公園の様子。森のように茂っていた木々はなくなっていた

 東京都中野区にある平和の森公園で多数の樹木が伐採され、区民たちが悲鳴を上げている。同公園では2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、体育館や陸上競技場の建設、野球場の拡張工事が進められているのだ。  かつては森のように茂っていた木々が根こそぎなくなり、むき出しとなった地表が痛々しい。2015年の構想段階から再開発に異議を唱える中野区民たちは、学習会や署名など頻回な住民運動を経て昨年11月に住民監査請求、今年4月には田中区長を被告に住民訴訟を起こした。

オリンピックの助成金を見込んだ工事に、多くの住民が疑問を持っている

伐採前(12月3日)

伐採前・2017年12月3日(写真/緑とひろばの平和の森を守る会)

伐採後(3月24日)

伐採後・2018年3月24日(写真/緑とひろばの平和の森を守る会)

 中野区民がこの公園にこだわる背景には、長い歴史がある。西武線沼袋駅からほど近い平和の森公園は、かつて政治犯・思想犯が収容された中野刑務所があった。区・議会・住民がともに20年間交渉して、国からの払い下げをついに実現。話し合いから、緑と水の防災公園として1985年に開園した。 「昔はもっと自然が豊かでオオタカやサギもいたし、ドジョウもとれた」と公園近くに住んで75年になるAさんは昔を振り返る。戦後の急速な宅地化で、中野区の1人当たりの公園面積は1.4㎡と都内ワースト2位の狭さとなった(2017年現在)。それだけに「自然を残してほしい」という区民の思いは切実だ。  そんな公園が今、2年後の東京オリンピック・パラリンピックの助成金を見込んで、区民の関心喚起、選手の練習場にと体育館と陸上競技場の建設、野球場の拡幅工事が行われている(参照:「オリンピック助成金を見込んだ東京・中野区の再開発で、1万7787本の樹木伐採」)。  このようなスポーツ公園とするならば、通常は15ha以上の広さが標準だという。6.5haと半分以下の広さの平和の森公園は、あくまで近隣住民のための公園だ。2015年に再開発構想が持ち上がって間もなく、住民らは「緑とひろばの平和の森を守る会」(以下、守る会)を立ち上げ、伐採の中止と区との話し合いを求めてきた。  しかし、何の譲歩もないまま池の水は抜かれ、今年1月15日に樹々の伐採が強行された。区長は「森を残す」と言っていたが、森は森の姿ではなくなった。時折姿を見せていた、公園のシンボル的存在のカワセミが4月10日、死骸となって公園内で見つかった。急激な環境の変化に順応できなかったのだろうか。
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低木は工事の邪魔で「産廃」扱い!
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