「アジアの盟主」は過去の話。日本スポーツ界は「現在の位置」を正確に把握すべき

 世界大会への出場は当たり前。強豪国との戦いでは苦戦するが、アジアでは常に一番……。日本のスポーツ界はそんなイメージで語られることが多いが、少子高齢化が進み、アジア各国の市場が急成長した今、現実はそう甘くない。育成年代からプロまで、さまざまなスポーツを追っている球技ライター・大島和人氏が、日本が立たされている状況を分析する。

フィリピンの「モール・オブ・アジア・アリーナ」(写真は2016年のフィリピンvsフランス戦) photo by dann_garcia via flickr(CC BY-SA 2.0)

バスケ日本代表が弱いのではなく相手国が強い

「リスペクト」という日本語に置き換えにくい表現がある。直訳すると「人を尊敬する」「価値を重んじる」といった意味だが、「相手を過大評価する」ことはリスペクトとは言えないだろう。現代の日本人は他者をデジタル的に、全肯定と全否定の両極端で評価する。それは自己評価も同様で、特にスポーツに対する反応は傲慢と卑屈の二極に振れる。  特にサッカーやバスケのようなグローバルスポーツに話が及ぶと、この手の両極端が強く出る。例えばバスケの男子日本代表は「FIBAバスケットボールワールドカップ2019」のアジア1次予選(グループB)で4連敗と苦しんでいて、バスケを知らないファンほど「情けない」「日本はアジア最弱レベル」と大げさに嘆く。  本当にそうだろうか? アジア1次予選に出場できるのは、国際バスケットボール連盟(FIBA)に加盟するアジア、オセアニアの計65か国(地域)のうち16チーム。「65分の16」に入る国ならば、いずれもバスケのプロリーグを持っていて、エリート選手の強化も行っている。  日本はアジアでも6番目の人口を持つ大国だし、’15年のアジア選手権では4強入りを果たしているのだから、今回の戦績が期待外れであることが確かだ。しかしオーストラリア、フィリピンといった「格上」が同じ組に入った不運もあり、このような結果はあり得た。  ’60年代、’70年代ならば、日本は多くのスポーツで自然とアジアのトップに立てた。人口の伸びが早く、またハードを整備し、組織的に強化をする国が他に少なかったからだ。ただハード一つとっても今の日本は「先進国」と程遠い。例えば今回のワールドカップ1次予選フィリピン戦が開催されたマニラの「モール・オブ・アジア・アリーナ」は2万人を収容する施設だった。また、「フィリピン・アリーナ」という5万5000人収容の施設もあり、2023年のワールドカップ決勝戦が行われる。  フィリピンは総人口を見れば日本より1500万人ほど少ないが、選手世代の「若年人口」が多く、加えてアメリカで生まれ育った選手も代表に戻ってくる。しかもバスケ熱が高いとなれば、簡単に勝てると考える方がおかしい。しかし日本人は’60年代、’70年代の感覚で「フィリピンのような小国に勝てない」と卑屈になってしまう。
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サッカーでも差は激減
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