「意見の聴取」がある日の朝は早い。何しろ、その後処分が決まり、もし免停が決まった場合は、希望者は停止期間が短縮される違反者講習を受けることができるのだ。そのため、朝8時半に免許センターに出向くことになる。
免許センターの職員の方々は、至極感じが良い。なにせ、職員の方もうっかり「お客さん」と口走るくらいなのだから無理もない。待合室に今日呼び出しがあった違反者たちが集まってくる。中年男性、若者、ほとんどは男性だった。全部で20人もいたろうか? 「意見の聴取」が開始されると、呼び出し通知にある番号順にドアが開いたままで音は丸聞こえの個室に呼ばれていく。一人だけ、聴聞官の質問に不満げに答えていた人がいたが、基本的には全員大人しく罪を認め、法廷闘争のようなことになるケースはほとんどなかった。そんな状態なので、2つ部屋があるので、20人いてもサクサクと進行し、程なくして筆者の「意見の聴取」となった。
担当の聴聞官とその補佐の方のような感じで2人の男性を前に、筆者はこれ以上ないほど神妙な面持ちで立った。「振り」だけではない。本当に心底反省してたのだ。スピード違反どころか短期間でさらに上乗せした自分のバカさ加減と不注意さに。
「この紙(呼び出し通知)に書かれている以外の違反はありますか?」
聴聞官は穏やかにそう言った。
どうせ隠してもわかることだし、ここは普通に「お恥ずかしい話ですが、処分決定後に指定場所一時不停止で2点の違反を重ねてしまいました」と回答する。ネットの情報だと、筆者の住所地の免許センターは近隣エリアに比べて「結構厳しい」という噂だったので、気持ちは重い(※ただ、内村特殊法務事務所の行政書士、内村世己氏によれば、筆者の住所地はネットでは非常に厳しいと言われているが、都道府県ごとの厳しさというのは違反の内容などによって全く異なっており、つまりネットの情報は全く当てにならないという)。
「なるほど。ではあなたは16点なので、普通であれば免許取り消しの点数なんですが、取り消しにするか、停止にするかはこれから検討しますので、処分の決定をお待ち下さい」
まだ引っ張るのかよ……などと思う余裕すらなく、「ありがとうございます」とだけ返して退室した。
その後、処分の決定まで小一時間ほど待たされる。「意見の聴取」順番待ちのときに言葉を交わした「違反仲間」と、心ここにあらずの状態のまま雑談をして過ごす。聞けば彼も、人身事故を起こしており、免取でもおかしくない線なのだとか。
「どうなるかなぁ」と、お互い我が身の行く先を案じてまんじりともしない休憩時間を過ごした。
そして時間が来た。