クアルコムにとってZTEは主要顧客の1社で、クアルコムはそれを失う。それだけでなく、顧客が競合他社に流れることにもなる。ほかのZTEと取引する米国企業も同様の影響を受けるはずだ。
また、ZTEはイランを含め米国の敵対国で多くの事業経験がある。イランなどへの違法な輸出には米国の技術も含まれるが、違法な輸出は秘密裏に実行したため、技術利用の対価は米国企業に支払っていない。これまで違法行為を繰り返した企業だけに、窮地に追い込まれることになれば、イランなどで取引がさらに拡大する懸念もあり、そうなれば米国政府や米国企業にとって損失になる。
そして、ZTE自体も特許の塊のような企業だ。世界知的所有権機関の特許出願リストでは2017年は2位、2010年から8年連続で3位以内に入るほどで、5G関連の特許出願は1,700件以上にも達する。また、中国の巨大なスマホ市場は米国企業にとっても無視できず、他分野を含めて中国政府の報復措置も想定できる。ZTEに対する厳罰は貿易摩擦を激化させ、米国企業も影響は避けられないだろう。
ZTEが製造したNTTドコモのオリジナルブランドのスマホ
また、NTTドコモは二画面スマホの共同開発やオリジナルブランドのスマホでZTEと協業しているが、影響は確認中という。
さらに、KDDIおよび沖縄セルラー電話、ソフトバンクもZTEより端末を調達し、ソフトバンクおよびWireless City Planningは通信設備もZTEより調達しているため、日本の通信事業者各社にも何らかの影響を及ぼす可能性がある。具体的な影響範囲に関しては、ZTEの精査が完了後に判明する見通しだ。
<取材・文・撮影/田村和輝>
たむらかずてる●国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報に精通。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ