禁止顧客リスト掲載者は米国の企業や個人などを含む米国人との取引や、米国人以外でも輸出管理規則(EAR)対象品目の取引が禁止となる。
EAR対象品目には米国原産の物品、技術、ソフトウェアが含まれる。そのため、禁止顧客リスト掲載者はEAR対象品目を調達できない。また、禁止顧客リスト掲載者はEAR対象品目の輸出や再輸出も禁じられる。原則としてZTEは米国人との取引やEAR対象品目の取り扱いが不可となる。
ZTEは影響を精査中としており、正確な影響範囲は定かでないが、想定できる最悪の場合の影響範囲を挙げてみよう。
ZTEの主要事業は通信設備事業と端末事業だ。まず、端末事業では米国のクアルコムからスマートフォン(スマホ)など端末の心臓部を担うチップセットの調達が不可となる。チップセットの調達だけならば、中国や台湾などの企業に置き換えられるかもしれないが、米国の技術を含むチップセットはEAR対象品目に該当する可能性がある。
また、ソフトウェアに関してはグーグルが提供するアンドロイドOSの利用で懸念があるが、アンドロイドOSはオープンソースで、公に入手可能なソフトウェアはEAR対象品目に該当しない公算が高い。ただ、アンドロイドOSを採用したスマホにはグーグルのサービスを搭載することが多く、こちらはEAR対象品目に該当する可能性が高い。中国ではグーグルのサービスを制限しており、中国で流通するスマホは基本的にグーグルのサービスは非搭載だ。しかし、ZTEは北米のスマホ市場に積極的で、出荷台数ベースでは米国で4位に入るなど、グーグルのサービスを使えないならば痛手となる。
ZTEの事業別売上高では端末事業より通信設備事業の比率が高く、通信設備事業はZTEにとって最大の事業となる。通信設備には4Gや3Gなど米国企業が保有する技術を利用するため、4Gや3Gの技術を利用した通信設備事業にも影響を及ぼす可能性が高い。なお、イランなどへの違法な輸出は端末事業ではなく通信設備事業で起きた。技術は物品を物理的に調達する必要はないが、勝手に利用すれば知的財産権侵害で別の問題が発生する。
特にクアルコムは特許の塊のような企業で、4Gや3Gなど通信関連の特許を大量に保有する。一般的に特許はEAR対象品目の技術と認識されるため、ZTEは4Gや3Gの技術を適用した通信設備や端末の取り扱いが困難になると思われる。最悪の場合、ZTEの事業は全面的に影響を受ける。
ZTEが豪州向けに製造した高耐久スマホ
そもそも、国際法の属地主義の観点からEARの過度な域外適用は国際法の原則に反するとも考えられるが、ZTEの事例も含めて米国政府は積極的に運用しており、米国政府の制裁を受ければ影響は大きいだけに、EAR対象品目を取り扱うならば遵守するしかない。
禁止顧客リストの掲載を受けて、ZTEとの取引を避ける企業は確実に増える。また、約7年間もEAR対象品目を取り扱えなければ、事業の継続は困難となる。ZTE自身も同社の存続と発展に深刻な影響を与えると認識している。
ZTEは交渉を通じた解決を断念しないが、必要であれば法的措置も講じるという。廃業阻止のためには禁止顧客リストから解除されるか、または猶予期間を得るしかない。まずは交渉で解決を目指す模様だが、前科があるだけに交渉は一段と厳しさを増すだろう。