世界同時株安は仕込みどき? じわじわ上げる中国株10選

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本土市場は複雑怪奇。狙い目は香港

 中国には深圳・上海の本土市場と香港市場の3つがあり、さらに本土市場は人民元建てのA株と外貨建てが可能なB株に分かれている。どこに参入すべきなのか迷いがちだが、田代氏は「香港市場が最適です」と解説する。 「人民元で取引される中国本土のA株は、ここ数年の市場開放政策によって、主要銘柄については外国人でも買えるようになったのですが、企業情報の入手が難しいといった弱点があります。また、株価は政策や市場の噂で大きく動くなど、ファンダメンタルズ以外のことに十分注意しなければいけません。投資初心者は、香港市場を中心に投資をしたほうが無難でしょう。香港市場は外国人投資家も多く、国際市場の値動きに近い動きをするため、世界の株価が全体的に上がっているならばチャンスです」  実際に香港市場で投資を行う人気株ブロガーのじゅん氏は「香港市場の企業はほとんどが英語のIRサイトを用意しているため情報を集めやすく、銘柄数も多いので香港のみでリターンを得ることは十分可能です」と、田代氏の意見に賛同する。 「私は事業内容とPERを精読し、割安な株をインデックス気味に保有するスタイルを取っています。中国株は全体的に値動きが荒いので、公益・電気通信と食品銘柄を中心とした保守的なポートフォリオを組み、残りはそれをカバーするため、成長が期待できる銀行やアリババなどのグロース株を保有しています。’17年は値上がり益と配当を合わせてプラス28%の成績でした」

中国特有の事情を読み取り、危険を察知

 中国の成長に乗り勝利をつかんだじゅん氏だが、値動きの荒い中国株で保守的な投資方針とは……。 「中国のGDP成長率は6.9%と非常に高く、これからも大きな成長が見込めます。そのためリスクの大きな銘柄を中心にせずとも、成長の恩恵にあずかることは十分可能です」  アメリカの4倍以上あるGDP成長率に注目し、ローリスク・ミドルリターンを実現したじゅん氏は、食品などの保守的銘柄だけでなく、テンセントやバイドゥといったハイテク銘柄でもリスクを抑えることはできると力説する。 「例えばバイドゥを例にすると、グーグルが検閲を嫌って中国から撤退したため今のバイドゥ一強状態となった背景がある。この場合はグーグルが検閲に妥協して再参入してきたタイミングで売りを検討すればいい。最近日本でも見かけるようになったテンセントのメッセージアプリであるWECHATも、中国政府によるLINEの規制があり、同様のことがいえます。中国特有の事情は日本人にとって難しい点ですが、そこをうまく読めばチャンスとなります」  テンセントの株価は2年前から3倍以上に伸び、IT銘柄はまさに天井知らずだが、買い方に注意が必要なIT企業も。 「バイドゥやアリババ、JDなどの大手IT企業は香港市場では取り扱っておらず、自社株を担保として米国で株と同価値の証券を発行する米国預託証券(ADR)での売買になりますが、SBIや楽天など、日本の証券会社でも問題なく取引できます。また1株単位での取引が可能なため、中国移動のような1単元が高額な株でもADRなら少額から投資可能なのはメリットですね」  また、じゅん氏は「今年は各企業の業績が相場に反映される冷静な地合いになるが、このまま好調な相場が続けば出遅れセクターが注目される可能性もある」と予想する。  じゅん氏が狙うセクターとは? 「エネルギーですね。原油価格の上昇に加え、政府はEVシフトを進めていますが、中国の広さを考えれば普及はまだまだ先で、これからもガソリンの需要は尽きない。また保険も興味深い分野。中国は国民保険制度が弱く、1年間で5000元を超えた部分と私立病院の医療費は10割負担。また中国では社会保障費が増大し、政府が病院への補助金を減らしている現状があるため、保険加入者は増える一方です。さらに自動車の保有台数も増えているため、これからの伸びが期待できます」  割安なうちに買っておきたい中国株だが、情勢を読み取る必要がある。情報収集は怠らずに。
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