痴漢冤罪、警察の取調室では「冤罪だろうがパンツの中まで検査される」

犯罪者の巣窟?留置場の異様な空間

 ほぼ全裸の身体検査を受けた後、所持品はほとんど全て警察預かり(“領置”という)になる。衣服も規制が厳しく、ボタンのついた服、ベルトのあるズボンなど、普通のサラリーマが着ているスーツでは留置場に入場できない。留置場内で着られるのは、ジャージがスウェットの上下のような物だけだ。  着る服がない場合、警察は上着から下着、靴下に至るまで、タダで衣装を貸してくれる。履物も靴は領置され、その代りに番号の書かれたサンダルを履くことを強要される。そして、 「今からオマエのことは、そのサンダルに書かれた番号で呼ぶから」  と告げられる。  留置場内の部屋は、昔は「房」と呼ばれていたが、今は「居室」という。ただ呼び名が変わっただけで、実態はそれほど変わりはない。鉄格子の入った檻で、家具の一切ない部屋である。収容されている被疑者の数が多かったり、特殊な事情がない限り、最初は複数の被疑者と一緒に生活する“雑居”に入れられる。  留置場の居室の入れられる前には、担当さんから「他の被疑者に名前や罪状は話さないように…」と釘を刺されることもある。しかし、留置場にブチ込まれた同士で交わされる会話のネタなんて、 「何で捕まったの?」  という質問から始まるのが普通だ。また、そういう会話をしているのを担当さんが見つけたとしても、それが咎められることは滅多にない。  ただ、留置場の場合、基本的に入れ替わりは頻繁で、部屋を支配するボスのような奴はいない。また、妙な連帯感がある。普通に社会人としてのコミュニケーション能力があれば、変ないじめを受けることはないだろう。  とはいえ、留置場内にいるのは刑事事件の容疑をうけて身柄を拘束されている被疑者ばかりだ。本当に罪を犯している人間も少なくない。留置場内は24時間警察官が監視している世界なので、むやみにビビる必要はないが、あまりに日常とはかけ離れた空間に呆然としてしまうかもしれない。

そもそも「逮捕」とはどういう意味なのか?

 朝はいつもと同じように会社や学校に通うつもりで家を出たら、気づいてみたら警察の留置場にブチ込まれていた……初めて逮捕を体験した人は、留置場の居室内でそんな自分の境遇に呆然自失するのが普通である。問題はそんなブタ箱にいつまで閉じ込められてしまうか?という点だ。  被疑者に対して逮捕状を突きつけて、身柄を拘束する“通常逮捕”の場合は、逮捕状を執行した瞬間から、実際に犯罪を犯した犯人を逮捕する“現行犯逮捕”だと、身柄を拘束して 「○時○分 逮捕!」  と、宣言した時から、ともに48時間以内に事件を検察庁へ送検しなければならない。事件が検察に送られると、今度はそれを受理した検事は24時間以内に、被疑者の身柄の措置を決断しなければならない。それは、 ・起訴か不起訴かを決定する ・裁判所に「勾留請求」をして、捜査を継続する  という選択だ。  検事がどちらの選択をしたとしても、“逮捕による身柄の拘束”というのは、最長72時間で終わり。それ以上の時間、被疑者の身柄を拘束しておこうと思ったら、今度は「勾留」という手続きをしなければならないのだ。  次回は検事調べと、勾留質問はどんなものなのかをお届けします。 <文/ごとうさとき> 【ごとうさとき】 フリーライター。’12年にある事件に巻き込まれ、逮捕されるが何とか不起訴となって釈放される。釈放後あらためて刑事手続を勉強し、取材・調査も行う。著書『逮捕されたらこうなります!』、『痴漢に間違われたらこうなります!』(ともに自由国民社 監修者・弁護士/坂根真也)が発売中
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痴漢に間違われたらこうなります!

痴漢冤罪とどう戦うか!?