北朝鮮、新型弾道ミサイル「北極星2」型を実戦配備へ――日本への影響は?

朝鮮中央テレビが公開した「北極星2」型の発射の瞬間 Image Credit: KCTV ---

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は5月21日16時59分ごろ(日本時間)、同国の北倉(プクチャン)付近から、1発の弾道ミサイルを発射した。ミサイルは高度約560kmに達したのち、発射地点から約500km離れた、日本の排他的経済水域(EEZ)の外の日本海に落下した。  米軍や韓国軍などはその後、今回発射されたのは、今年2月にも発射された、新型の準中距離弾道ミサイル「北極星2」型(KN-15)であったとの分析結果を発表した。  そして翌22日の朝、北朝鮮は国営メディアを通じて、これが北極星2型の発射試験であったと発表。この発射は実戦配備に向けた最終的な試験が目的であったとし、発射試験を視察、指揮したキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長は「百点満点だ」と述べ、北極星2型の量産開始と、部隊への実戦配備を承認した、と伝えている。  もし北朝鮮が、これから北極星2型の量産と実戦配備を実際に進めることになれば、日本にとって大きな脅威となる。これまで日本を射程に収めていた「ノドン」などと比べ、より実戦向きのミサイルだからである。

より実戦向きのミサイル「北極星2」型

 北極星2型(米国はKN-15というコードネームで呼んでいる)は、今年2月12日に初めて発射が確認された、新型のミサイルである。北朝鮮は昨年8月、潜水艦から発射する形式のミサイル「北極星1」号(KN-11)の発射試験に成功しており、北極星2は、この北極星1を陸地から発射できるように転用したミサイルだと考えられている(『気付かれにくく、すぐ撃てる――北朝鮮の新型ミサイル「北極星2型」の脅威』参照)。  北極星1型、2型の最大の特長は、推進剤(燃料と酸化剤)に固体推進剤を使っている点にある。ノドンやムスダンなど、他の弾道ミサイルが使っている液体の推進剤と比べ、固体推進剤は長期間の保存に向いており、あらかじめ何発も製造して、実戦に備えて保管しておくことができる。  また、点火すればすぐに飛ばせるため、発射にかかる準備時間が短くできることから、動向を察知されにくく、さらに運用に必要な人員も少なくできるという利点もある。  こうした理由から、固体推進剤は本質的にミサイルに適した特性をもっている。長年、液体推進剤を使ったミサイルの開発を続けてきた北朝鮮が、近年になって固体推進剤のミサイル開発にも注力し始めたのは、この大きな利点を買ってのことだろう。 ⇒【画像】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=140966

北極星2型の発射の様子 Image Credit: KCTV

 さらに北極星2型は、発射筒(キャニスター)から圧縮ガスで空気でっぽうのように打ち出され、空中でエンジンに点火して飛んでいく、「コールド・ローンチ」と呼ばれる発射方法を採用している。この方法は、敵からの探知を遅らせることができるという利点があり、米ロをはじめ、世界の大半の弾道ミサイルが採用しており、従来の北朝鮮が採用していた、地上でミサイルのエンジンに点火して飛んでいく方法より、より実戦に向いた方法でもある。
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異例となる夕方発射の理由とは?
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