今回の試験発射の成功を受け、北朝鮮は北極星2型の量産と、部隊への実戦配備をおこなうとしている。試験の回数の少なさや、かの国の品質保証がどうなっているのかといった点から、私たちの基準でいう量産、実戦配備とは、やや意味合いが異なる可能性はあるが、それでも試験発射に成功している以上は、実際に飛来する危険を考えておくに越したことはない。
北極星2型の最大射程は、準中距離弾道ミサイルに分類される1200~2000kmほどとされるると考えられており、これは北朝鮮から直接、日本全域を狙うことができる数字である。北朝鮮はこれまでも、ノドンやスカッドERなどで日本を射程に収めてはいたが、それがミサイルとしてより適した性能をもつ北極星2型によって代替されることになれば、その脅威は増す。
もちろん、北極星2型の飛ぶ速度、高度は、米軍や自衛隊などが配備している弾道弾迎撃ミサイルで撃ち落とせる範囲内ではある。しかし、同時に複数発射されれば、その分撃ち漏らす危険は高まる。
また、固体推進剤のミサイルの技術がさらに進歩すれば、より重い弾頭、あるいは複数の弾頭を積んで、より遠くの米国本土まで飛ばすことも可能になる。実際に北朝鮮は、今年4月の軍事パレードで、固体推進剤の大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられる大型ミサイルを披露している(『
ハリボテか? それとも脅威か? 北朝鮮が披露した新型「大陸間弾道ミサイル」の正体』を参照)。
これらのミサイルの開発が実際におこなわれているのか、どこまで進んでいるのかは不明だが、いずれにしても、北朝鮮の固体推進剤のミサイル開発と、弾頭の開発が大きく進展していることはたしかであり、日本にとっては今日、明日の、そして米国などにとっても近い将来の、大きな脅威になることは間違いない。
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
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【参考】
・防衛省・自衛隊:北朝鮮による弾道ミサイルの発射について(第2報)(
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2017/05/21b.html)
・U.S. Pacific Command detects, tracks North Korean missile launch > United States Forces Korea > Press Releases(
http://www.usfk.mil/Media/Press-Releases/Article/1188420/us-pacific-command-detects-tracks-north-korean-missile-launch/)
・Lake Yonphung: Launch Site for the Second Pukguksong-2 Missile Launch | 38 North: Informed Analysis of North Korea(
http://38north.org/2017/05/pukguksong2_052317/)
・The Pukguksong-2 Approaches Initial Operational Capability | 38 North: Informed Analysis of North Korea(
http://38north.org/2017/05/jschilling052417/)
・Pukkuksong-2 | Missile Threat(
https://missilethreat.csis.org/missile/pukkuksong-2/)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。
著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。
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