北朝鮮、新型ミサイル「火星12」型を発射――その正体と実力を読み解く

ムスダンとの兼ね合いは? さまざまな疑問点

朝鮮中央テレビが公開した「火星12」型の写真。エンジンからの噴射ガスとは別に、その左側にはみ出るように別のガスが出ているように見える Image Credit: KCTV

 もっとも、この説に欠点がないわけではない。  前述の記事のように、この新型エンジンが試験されたのは昨年9月が初めてであり、ヴァーニアも装着した状態で試験されたのは今年3月が初めてである。そこからわずか2か月で、実機のミサイルに組み込み、そして実際に発射するだろうか、という点である。  失敗すれば貴重なエンジンや設備を失う上に、国際社会から恥をかくことになるのにもかかわらず、十分に試験されていないミサイルの発射を強行するというのはやや考えにくい。これを説明するには、北朝鮮のミサイル開発の異常さを踏まえるとありえなくはない、と考えるか、あるいは公表していないだけで、もっと以前から燃焼試験がおこなわれていたといった可能性を考えるしかない。  また、昨年4月に試験された、ムスダンのエンジンを2基束ねたようなエンジンの存在や、そのエンジンを使ったICBM級とされる「KN-08」や「KN-14」といったミサイルとの兼ね合いも疑問である。同時に並行して開発するのは、とくにリソースの少ない北朝鮮にとっては無駄が多く、本来ならどちらかひとつに注力するのが合理的である。  もっとも、ムスダンはこれまでなんども発射試験が行われているものの失敗が続いており、なんらかの致命的な問題を抱えている可能性が高い。そのため、ムスダンの実用化を諦め、その代わりに異なる仕組みのエンジンをもち、性能も比較的近い火星12にシフトしようとしている可能性もあろう。  ただ、ムスダンが開発されたのはまだここ最近のことであり、つい先日も発射試験がおこなわれたところから、いずれにしても並行して開発していた、あるいは今なおしていることは間違いない。
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大陸間弾道ミサイルへの発展はあるか?
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