その様な事態の中で、両国の間で今回の事態発生の要因となったのは、国連教育科学文化機関(ユネスコ)でエルサレムの聖地としての位置づけで、イスラム教、ユダヤ教双方が聖地だとしている「神殿の丘」そして「嘆きの壁」(ともにユダヤ教での呼称)を、ユダヤと関係を無視しているような形で「聖地としての決議案」を出したことについて、ドイツが賛成の意向を表明して来たということが背景にある。
このドイツの姿勢はこれまでのイスラエルとドイツの絆を断ち切るものだとイスラエル政府は感じたのである。
しかも、ガブリエル外相が前出し二つのNGOと会見する日は丁度イスラエルの独立記念日に当たる日であったということから、ネタニャフ首相にとって、それはイスラエル政府を侮辱する行為だと受け止めたようであった。
ネタニャフ首相はガブリエル外相以上に気性の激しい性格である。そこから、外交儀礼として無礼とでも受け取られても仕方のない両者の会談をキャンセルするという決断を下したのであった。
その上、毎年行っている両政府の閣僚が集まっての会議も2月にメルケル首相の方から今年は閣僚の都合がつかないということで同会議の中止もネタニャフ首相に伝えられていた。これも僅かではあるが、ネタニャフ首相の今回の判断に影響したようだ。
<文/白石和幸 photo by
SPD Schleswig-Holstein via flickr(CC BY 2.0)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身