日本の最先端技術は財政問題を抱えるサウジを救えるか?「日・サウジ・ビジョン2030」が合意

海水淡水化の新技術に注目

 興味深い要素のひとつは「海水から飲料水を製造する技術」である。海水淡水化については、日本側に株式会社ササクラ,一般財団法人造水促進センター、サウジ側にサウジ側キングアブドゥルアジズ科学技術都市(KACST),海水淡水化公団(SWCC)が覚書を交わしたトリ・ハイブリッド海水淡水化装置商業化に係る協力もあるが、ここでは、新しい淡水化技術として有望視されている「正浸透(FO)膜技術開発」について言及してみたい。  これは、それぞれ開発についての覚書は、日本側は東洋紡株式会社、JFEエンジニアリング株式会社がそれぞれサウジ側の海水淡水化公団(SWCC)と覚書を締結した。同様に、「正浸透(FO)技術を用いた中東における新しい海水淡水化技術の開発に関する覚書)では、サウジ側 International Company for Water and Power Arabian Japanese Membrane Company に対して、日本側は東洋紡株式会社およびJFEエンジニアリング株式会社が連名で覚書を締結した。  東洋紡は、逆浸透(RO)膜法ではすでに中東で5割、サウジアラビアでは8割のシェアを握る最大手である。サウジアラビアのシュケイク地区およびジェッダ市では、逆浸透膜には過酷な条件となる高温・高塩濃度海水でそれぞれ日量24万立方m、26万立方mの高品質の飲料水を製造している。また、ラスアルカイル地区の世界最大級の大型海水淡水化設備「ラスアルカイルプラント」(日量約100万立方m)では、日量約100万立方mのうち、34.5万立方m分の飲料水を東洋紡の逆浸透法で製造している。(参照:東洋紡によるサウジ納入実績)  今回の覚書によって、東洋紡はより少ない電力で淡水化できる正浸透(FO)膜を淡水化プラントに事業化することで、人口が急増している中東市場で需要を取り込むことになる。(参照:「日経新聞」)  一方、JFEエンジニアリングも、また、正浸透(FO)膜事業の立ち上げを進めようとしている。2015年には、“FO膜モジュールに供給される被処理水、誘引溶液の濃度、膜の状態(劣化等)に変化が生じても、安定した造水量が得られる水の脱塩処理装置を提供すること”を目的とする「水の脱塩処理装置」の特許も出願し、2017年2月16日には公開されている。
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特殊フィルム利用の野菜栽培
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