中国政府が、韓国や日本に対してこうした強硬策を押し通す理由だが、実は、中国政府は中国人をあまり海外へ行かさせたくないのではないかと香港在住の日本人コンサルタントは指摘する。
中国人旅行客が増えている親中国家カンボジア
「中国は21世紀に入り消費意欲旺盛な中間層が大幅に拡大したためガス抜きも兼ねてこの10年ほど海外旅行への規制を緩和し、『マナーアップ中国』なんて標語を掲げて推奨していました。ですが、政府の予想よりも急速に海外旅行へ行く人が増えてしまったのか、昨年春に爆買防止の新課税など規制強化へ乗り出しています。表向きは、カナダやオーストラリアなどへの中国人移民が増えることで人民元流失を阻止したいのでしょうが、本音は、中国人が海外へ行くとで母国である中国と比較されることを嫌がっているからでしょう」
つまり、中国政府は、中国より発展している国へ行くことで比較されることを嫌がっているふしがあるというのだ。そのため、できれば、海外旅行を全面禁止くらいにしたいのだろうが、さすがに今の中国でも毛沢東時代のような強権発動はできない。禁止する何かしらの理由が必要なのだ。その理由に、THAADや放射能が利用されているというわけだ。
昨年、タイへ初めて旅行した武漢の20代女性は、バンコクの発展ぶりに驚いたという。交通インフラやショップもそうだが、何よりもインターネット規制が中国とまるで違うことがショックだったと話す。
中国政府としては、自国と比較されても問題なさそうなカンボジアやラオス、ミャンマーなどの中国が比較的に優位な開発途上国への旅行推奨へシフトしたいのではないのかもしれない。
<取材・文/我妻伊都 Twitter ID=
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