霧ヶ峰南麓に東京ドーム40個分!メガソーラーが地域社会を破壊する!?

地域社会の分断は「原発と変わらない構図」と専門家

住民説明会

事業者による住民説明会

 説明会では、その土捨て場の位置を移動させる案が示された。後日、東京のLooop本社で森田卓巳IPP事業部長に尋ねると、確かに「元々は渓流というか、調整池の上に盛土をする予定でした」と認め、「懸念の声があるので事業地を買い足して、それを移せないか検討中だ」という。  茅野市で行われた説明会では、質疑応答で「霧ヶ峰はみんなの共有財産だ」という意見が住民から出された。一方、翌日に行われた諏訪市での説明会では、地権者側から「何をもって『みんなのもの』と言われているのか」といった刺々しい発言も飛び交った。  要望書を出した米沢北大塩区の田中正行区長は、「親父の世代より前は、片道3時間半歩いて馬や牛を引っぱって霧ヶ峰に牧草を狩りに行っていたんです」とかつては実際にみんなの共有財産だったことを明かしてくれた。時代が変わって、その共有財産が大規模開発の対象となり、メガソーラーが地域分断のタネとなってしまったのだ。  事業地188ヘクタールのうち133ヘクタールを管理する上桑原牧野(かみくわばらぼくや)組合の伊藤洸一組合長は、「組合員が老齢化し、開発しながらでなければやっていけない。『だったら自然エネルギーの太陽光だったらいいだろう』と組合の総会で決めた」と売却仮契約に至った苦しい事情を語った。  過疎に悩む地域の住民がエネルギー開発に可能性を求め、その影響を受ける周辺住民との分断が生まれる。こうした事態について、再生可能エネに詳しい千葉商科大学の鮎川ゆりか・政策情報学部教授はこう警告する。 「過疎地の地域資源を東京の資本が収奪し、地域の分断を引き起こす構図は原発と変わらない。『原発よりマシ』と言って地域合意も取らずに進めるうち、再生可能エネの本質を見失ってしまうことを都会に住む私たちこそが気づかなければなりません」 <取材・文・写真/まさのあつこ>
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