ドラゴン2のもとになった無人補給船「ドラゴン」。すでに11機が宇宙を飛び、10機が地球への帰還に成功している(1機はまだ宇宙で運用中) Image Credit: NASA
一方で、明るい側面もある。
スペースXはすでに無人の補給船「ドラゴン」を開発し、地球から国際宇宙ステーションへ補給物資を運び、逆にステーションの実験で生み出された成果物などを地球を持ち帰る、往復飛行を何度も行っている。ドラゴン2はこのドラゴンをもとに開発されているため、(もちろん無人と有人で違うところはたくさんあるが)完成しない見込みはない。
またファルコン・ヘヴィも、まったくのゼロから開発されているわけではなく、既存のロケット「ファルコン9」を組み合わせて造られるので、ドラゴン2と同様に、ある程度開発のリスクは抑えられている。
開発が遅れているのは事実であり、2018年に月へ飛行できるかの保証もないが、時間にこだわらなければ、いつかは完成し、月へ飛べる日は来るだろう。
また、月への飛行に危険があるのも事実だが、一方で冒険とは危険を承知で挑むべきものであり、尻込みしていてはいつまでもは訪れない。「リスクがあるからやらない」のではなく、「やるためにリスクを下げる最大限の努力をする」という姿勢は評価されるべきだろう。
何より明るいのは、この冒険のためにお金を出したのが、NASAなどの政府機関ではなく、2人の民間人ということである。さらに、他にも興味を示している人がおり、スペースXも1回きりで終わらせるつもりはないとしている。
スペースXによる月世界旅行が、年に数回でも定期的に行われるようになれば、同社にとって収入源の一つになり、より安価で安全な宇宙船が飛ぶようになるだろう。さらに他の企業も宇宙旅行を始めるようになるかもしれない。
このスペースXの月世界旅行をきっかけに、私たちも宇宙旅行に行けるような時代がやってくる――というのは楽観的すぎるかもしれない。それでも、そんな時代が少しずつでも近付いてきていることは間違いないだろう。