上野千鶴子氏の言う「平等に貧しくなろう」はそんなにマズかったのか?

日本は人口減少や衰退を受け入れて「成熟」モデルの先進例になるべき

 さらに多くの批判を浴びているのが「日本は人口減少と衰退を引き受けるべきです。平和に衰退していく社会のモデルになればいい」という箇所だ。人口減少に関しては広く認識されてきたが、「衰退」という言葉に戸惑う人が多いのだろう。であれば、「衰退」を「成熟」という言葉に置き換えればいい。  マイナスとか、ダウンとか、衰退とか、縮小とか、なぜ、ネガティブに捉えるのだろうか。受け入れるべき現実であるし、避けがたい現実をポジティブにとらえることでむしろやっと、経済成長至上主義から抜け出し、人や環境を大切にする未来設計、制度設計に向かえるのである。安倍政権が言う GDP600兆円を目指して、さらに長時間働けというのだろうか?  今より鬱や自殺が増えるのは必至だ。もっと生産効率を上げろというのだろうか? 生産効率をあげれば、労働時間を減らすのでなく、雇用を減らすのが経営者側の常套手段であることは歴史が証明している。イノベーションで経済成長を、という机上の空論的な学者が多いが、例えば人工知能が進む20年後には職業の半分が消滅するという予測が現実になるのだとしたら、経済栄えて人は滅びる、企業栄えて人は滅びる、という近未来になるわけだ。  日本は人口減少や衰退を受け入れて、成熟モデルの先進例になるべきだ。  こう言うと、「途上国のようになるのではないか?」とか「江戸時代や石器時代のようになるのではないか?」といった想像力の乏しい発言を耳にすることが多い。  例えば、成熟社会になったからといって新幹線がなくなるわけではない。新幹線の便数が減るだけだ。それは人口減少なのだから当然のこと。新幹線の便数が減ることが、不便な原始時代に戻ることだろうか? むしろ人口減少を前にしているというのに、「経済成長のため」と言って、リニア中央新幹線を東海道新幹線と並列して走らせる思考こそが、どう考えてもオカシイのである。
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「平等に貧しくなる」は問題か?
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