「日ロ首脳会談前から、鉄道ファンの間ではかなりの話題になっていました。宗谷海峡に海底トンネルを通すのは、日本の技術力を考えればそれほど難しくないでしょう。青函トンネルのほうが53.8kmと長く、推進も深く、さらに本州と北海道の地質が違う難工事だったが、成功させています。技術的には十分、実現可能性のある計画ですよ」(鉄道ジャーナリスト)
だが、この壮大な計画にかかるコストは、少なくとも1兆円規模になるといった試算も出ていた。
「トンネル建設の費用は1km当たり100億円といわれ、単純計算で宗谷海峡に海底トンネルを建設した場合、4200億円ほど。ただ、それだけでなく経営難でインフラに不安のあるJR北海道・宗谷線の再整備なども必要で、低く見積もっても1兆円を上回る費用が必要でしょう。ロシアの専門家の試算では、間宮海峡の架橋(あるいはトンネル建設)、サハリンの鉄道再整備を含めて、総額を120~150億ドルと見積もっています。一方、経済効果は最大で年間3000億円程度が見込まれるが、あくまでももっとも上手くいった場合の希望的な数字であることも否定できません……」(地銀系シンクタンク研究員)
実際、政府高官は「まるで夢物語」とシベリア鉄道北海道延伸計画を一蹴しているが、このほかにも実現のためのハードルがいくつも立ちはだかる。
「日本とロシアではレールの幅が違うのです。日本は1067mmで狭軌、ロシアは1520mmで広軌なので、貨物の輸送の際は積み替えが必要になる……。とはいえ、実現すれば物流や観光が活性化するだろうし、経営に苦しむJR北海道を救う突破口になる可能性があるのです」(前出・鉄道ジャーナリスト)
昨年10月、JR北海道は51駅の廃止を進めていることを明らかにした。51駅のおよそ3分の1は宗谷線の駅だが、北海道延伸が実現したとき、日本に上陸したシベリア鉄道がまず走るのが宗谷線の線路なのだ。
世界情勢が激変するなか、現在の日ロ関係を見ればそう簡単には実現しそうもないように思える……。ロシアの鉄道が日本に入ることで、安全保障上の懸念も生じる。
だが、この壮大な計画実現の可能性は消し飛んだわけではないという見方もある。