JAXAの超小型ロケット、打ち上げ失敗――それでも失われない“民生品活用”の意義と成果

小さなロケットが精一杯”背伸び”して衛星を打ち上げ

 SS-520-4は2段式の観測ロケット「SS-520」に、小さな第3段ロケットを追加して、人工衛星を打ち上げられるようにした3段式のロケットである。  観測ロケットというのは、地球の上空や、さらにその上の宇宙空間を観測したり、無重力状態を利用した実験を行ったりするためのロケットで、人工衛星を打ち上げるよりも手軽に観測や実験ができ、場合によっては人工衛星では行けない領域を観測することもできる。

打ち上げ前のSS-520ロケット4号機 Image Credit: JAXA

 観測ロケットは、人工衛星を打ち上げるロケットほど大きなエネルギーを出す必要がないので、基本的に小型のロケットが多い。けれども、観測ロケットの中でも比較的大型のものはあるため、それにロケット段を追加するなどして”背伸び”をすれば、観測ロケットでも人工衛星の打ち上げは可能になる。そして今回のSS-520-4が、まさにそんなロケットだったのである。  SS-520は、1980年に開発された1段式の「S-520」というロケットが原型となっている。S-520は150kgの実験・観測機器を高度300kmまで飛ばすことができる。とても信頼性の高いロケットで、1980年以来これまでに30機が打ち上げられている。SS-520はそのS-520の上に小さなロケットを追加で載せて2段式にし、さらに高い高度へ飛べるようにしたロケットで、140kgの機器を800kmまで飛ばすことができる。1998年と2000年に2機が打ち上げられ、両方とも成功している。  そしてこのSS-520に、さらに小さなロケットを追加して、超小型の人工衛星を打ち上げられるようにしたのが、今回のSS-520の4号機だった(3号機は計画の遅れによりまだ飛んでおらず、4号機が先に飛ぶことになった)。
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打ち上げから20秒で信号が途絶えた
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