NASA、日本が一番乗りするはずだった「木星の小惑星」に探査機打ち上げへ

2番でも日本の探査機にある意義

木星トロヤ群小惑星の探査を目指す、日本の「ソーラー電力セイル探査機」 (C) USRA-Houston

 ただ、ソーラー電力セイル探査機にはルーシーにはない特長があり、たとえ一番乗りは果たせなくても、その意義は薄れることはない。  ルーシーは、木星トロヤ群の中を突っ切るように飛び続け、その途中で通過する6つの小惑星を、通りすがりに調査するという方法で探査を行う。1機の探査機で複数の小惑星を探査できるという利点はあるものの、一つひとつをじっくり探査することはできない。  一方ソーラー電力セイル探査機は、ある1つの小惑星をターゲットとして、その小惑星のまわりを回りながら探査し、さらに小型の探査機を着陸させ、地表や地中を詳しく探査する。さらに石や砂を回収して、地球に持ち帰ることも考えられている。訪れることができる小惑星は1つだけだが、そのぶんじっくりと探査ができる。  もちろん、どちらのやり方が優れている、劣っているという話ではなく、やり方が違うというだけのことで、お互いにお互いの探査を補完しあうような関係にある。たとえば先にルーシーが探査することで、あとから訪れる日本の探査機にとっては一つの指標になり、探査のやり方などをより効率的にできるかもしれない。また日本の探査機による成果が、先行したルーシーによる発見や調査の成果を補強したり、あるいはまた新しい謎が生まれたりといったことも期待できる。  その最初の1個が発見されてから100年以上が経ち、人類はようやく、木星トロヤ群小惑星への切符を手にする。そしてそこで、太陽系誕生以来、約46億年も眠り続けている謎に出会おうとしている。 <文/鳥嶋真也> とりしま・しんや●作家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。 Webサイト: http://kosmograd.info/about/ Twiter: @Kosmograd_Info 【参考】 ・NASA Selects Two Missions to Explore the Early Solar System | NASA(https://www.nasa.gov/press-release/nasa-selects-two-missions-to-explore-the-early-solar-system) ・Southwest Research Institute (SwRI) 2017 News Release – SwRI to lead NASA’s Lucy mission to Jupiter’s Trojans(http://www.swri.org/9what/releases/2017/nasa-lucy-mission-jupiter-trojan.htm#.WG7iNWVDSHs) ・http://www.hou.usra.edu/meetings/lpsc2016/pdf/2061.pdf ・ソーラー電力セイル探査機による木星トロヤ群小惑星探査計画について(http://www.hayabusa.isas.jaxa.jp/kawalab/files/documents/20160615SPS_introduction_ver1.1.pdf) ・ソーラー電力セイル探査機による 外惑星領域探査の実証(https://repository.exst.jaxa.jp/dspace/bitstream/a-is/560432/1/SA6000046250.pdf
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: КОСМОГРАД Twitter: @Kosmograd_Info
1
2
3
4
イーロン・マスク

世界で最も注目される起業家の成功哲学を明らかにするビジュアルムック