現役の中小企業診断士が目撃した「潰れる/生き残る」中小企業の社長はここが違う!

“失敗の形”②とにかく社長が数字に弱い

 これには異論のある方も多いのではないでしょうか。実際、私が知っている製造業の社長さんにも、「数字のことは女房と税理士に任せてるよ。俺は現場で人の何倍も努力してるんだ!チマチマ数字のことなんか考えてられるか!」と言って、それなりに経営が上手くいっている人もいます。  しかし、これは冒頭に申し上げた、「成功の形はそれぞれに違う」ということのひとつの例だろうと、私は考えています。私が携わった案件で見る限り、業績が長期に低迷している企業の社長は、おしなべて数字オンチでした。このコラムをお読みの、第一線で活躍するビジネスマン諸兄には信じられないかもしれませんが、営業利益と経常利益の違いが分からない、債務超過の意味を知らない、という中小企業経営者は意外と多いものです。  経営者が数字に弱いと、大きく2つのデメリットがあります。ひとつは、決算数値を見てもどこに問題があるか分からず、よって経営改善の手が打てない、あるいは手を打つのが遅れること。もうひとつは、銀行や取引先に不安を与えてしまい、得られるはずの支援を得られなくなることです。下手をすると、数字の知識がないことに付け込んで、怪しげな再生スキームを持ち込む悪徳コンサルタント(私じゃないですよ)に、会社の資産を食いつぶされるかもしれません。  社長が数字に弱くても経営が成り立っていたのは、マクロ経済が順調に伸びていた高度成長期までの話。今の厳しい経営環境で、トップが数字を読めないのは致命的と考えるべきです。

“失敗の形”③公私混同

 この言葉からイメージするものは人によって違うと思います。中には、「社長が自社の女性社員を愛人にする」なんてことを想像した方もいるのではないでしょうか。  これはこれで、社内を妙な雰囲気にして士気を下げる立派な公私混同ですが、より如実に表れるのは、やはりお金に関することです。ありていに言えば、会社のお金を社長が個人的に流用することです。  現実には、このような会社資金の流用は大した罪の意識もないまま行われることが多く、それだけにタチが悪いとも言えます。個人の住宅や自家用車の購入費、子息の教育費などを、「銀行に借りたら利息を取られる」とか、「また銀行に頭を下げるのはイヤだ」といった些細な理由から個人の借入で調達せず、役員貸付金などの名目で会社のお金に手をつけてしまうのです。  しかし、ひとたび会社の経営が傾くと、会社の運命と一蓮托生である社長への貸付金は焦げ付く可能性が高まります。つまり不良資産になりますので、処理する際には特別損失を計上せざるを得ず、事業再生の道を一気に困難にしてしまいます。  ちなみに、お金の面での公私混同を見抜く簡単な方法は、貸借対照表の資産の部を見ることです。ここに、前述の役員貸付金や短期貸付金、立替金、仮払金などの勘定科目があり、それが他に比べて多額である場合、会社資金の個人流用を疑う余地があります。
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失敗する中小企業に共通することは?
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