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突然ですが、「幸福の形はいつも同じだが、不幸の形はそれぞれ違う」という格言をご存知でしょうか? これは正確には格言ではなく、トルストイの『アンナ・カレーニナ』冒頭に出てくる文章、「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」(トルストイ、岩波文庫、1989)が簡略化されて、格言のように人口に膾炙したものです。
この言葉を知ったのがいつだったか、今となっては記憶が定かではありませんが、聞いた当初はそれなりに含蓄のある深い言葉だな、と感心したのを覚えています。
しかし、故郷である四国の愛媛県で経営コンサルタントとして活動するようになってから、私はこの言葉に違和感を持つようになりました。理由は、この言葉の「幸福」と「不幸」をそれぞれ、ビジネス上の「成功」と「失敗」に置き換えたとき、現実に起きている現象は真逆だったからです。すなわち、「(ビジネスにおいて)生き残る成功の形はそれぞれに違うが、潰れる失敗の形はどれも似たものである」ということです。
本稿では、中小企業の具体的な“失敗の形”をいくつか例示し、その底流にあるものを探ることで、なぜ「どれも似たもの」と言えるのか、説明したいと思います。