現役の中小企業診断士が目撃した「潰れる/生き残る」中小企業の社長はここが違う!

“失敗の形”①業績が悪いのに、役員報酬がやたら高い

 経営コンサルタント、特に、私のように中小企業診断士という国家資格の下でコンサルをやっている者にとって、主業務のひとつは事業計画書の作成です。事業計画書と一口で言っても、その中には創業計画書、新規事業計画書、中期経営計画書、事業改善計画書などいくつも種類があります。  中でも作成にもっとも慎重さが要求されるのが、業績が悪化した企業の再生計画である事業改善計画書です。この計画の出来栄えによって、事業再生に欠かせない銀行や取引先といったステークホルダーの協力度合いが変わってきますので、コンセンサスを得ながら、かつ一定のスピード感をもって物事を前に進めていく必要があります。  その前提になるのが、「なぜ業績が悪化したのか?」を知るための現状分析で、これには過去数年分の決算書が欠かせません。この財務分析時にかなりの頻度でお目にかかる現象として、「業績が悪化しているのに役員報酬が高止まっている」というものがあります。  これは外形的には、「会社の調子が悪いのに社長だけは高い給料を取っている」ということになり、正直、銀行や取引先の心証を悪くします。現実には、社長だけがいい目を見て従業員はリストラや給与カットで痛めつける、という絵に描いたようなブラック企業は少なく、景気が良かったころに上げた役員報酬をなんとなくそのままにしているだけ、というケースが多いようです。したがって、このような企業の中には役員借入金や未払費用という形で社長の給料を会社に“還流”し、ピンチをしのいでいるところも少なからずあります。  しかし、これはあくまで一時しのぎのやり方に過ぎません。また、「会社に一時的に貸したことにして、また景気が良くなれば返してもらえばいいや」という経営者の甘えも垣間見える施策です。いずれにせよステークホルダーのウケは悪く、再生計画のカギである金融支援、取引条件変更を得られない可能性が高まります。結果、失敗=倒産への道を早めることになるのです。
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社長が“数字に弱い”企業は要注意?
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