館内には椅子が多く設置されたほか、イートインなどの休憩スペースも充実
まるで百貨店かと見まがうようなこだわりの売場で華々しいオープンを遂げたイオンスタイル碑文谷であったが、今後成功を収めるために乗り越えなければならない「一番の大きな壁」は、これまでのダイエー、そしてイオンの「経営イメージ」の払拭ではないだろうか。
かつて総合スーパーのなかでも、西武セゾングループ時代の西友や、マイカル(サティ)などは、総合スーパーでありながら「スーパーの商品から百貨店並みの高品質商品までの品揃え」を謳っていたのに対し、ダイエーやジャスコ(現・イオン)は、従来のスーパーマーケットと同様の、悪く言えば「安かろう悪かろう」という大量販売路線を追従、長年に亘って全国で画一的な店づくりを行い、格安プライベートブランドの「セービング」や「トップバリュ」の拡充を推し進めてきた。
館内の窓からは都心が一望できる。 店舗の近隣に輸入車ディーラーが並ぶ光景は「碑文谷」を印象づける
そうしたなか、消費者は総合スーパーよりも「カテゴリーキラー」と呼ばれる大型専門店のほうが「専門店ならではの多様な品揃えがあるうえに安くていい商品が買える」ということに気付き、総合スーパーという業態は「何でもあるのに買いたいものがない」とさえも言われるようになった。
一方で、消費者の嗜好が多様化するなか、近年のイオングループはかつての大量販売路線に対する反省もあり経営方針を転換。以前「フランスの新業態スーパー「ピカール」、ついに日本初上陸!」(参照:
https://hbol.jp/117959)の記事においても紹介したように、世界各国の流通企業の力をも借りることで「高品質化戦略」へと大きく舵を切り始めている。
イオンスタイル碑文谷においても、インストアBarや輸入食品売場、ナチュラルコスメの売場を展開するなど、これまでイオンが主に都市部の新型店舗でおこなってきた「高品質化戦略」の成果が思う存分に発揮されており、とくに高級住宅街でありながら近くに百貨店が無い目黒・碑文谷においては、以前のダイエーと比較すると「ハレの日の買い物の場」としても機能するポテンシャルをも感じさせられる魅力的な店舗となった。
目玉の1つであるイオンスタイル碑文谷のワイン売場。百貨店・専門店顔負けの規模に圧倒させられる。(店舗公式サイトより)
しかし、こうした店づくりが維持できるならば一度掴んだ顧客は離れないであろうと思わされた反面、これまで「ダイエーには欲しいものがない」と考えて都心の百貨店や駅ビルまで足を延ばしていた層や、かつて昭和時代にはダイエー碑文谷店に足を運ぶことも多かったという三軒茶屋や武蔵小山、自由が丘など店舗から数キロ離れた二次商圏の住民が、店舗の魅力に気づき、新たにイオンスタイル碑文谷まで足を運ぶようになるかどうかは未知数だ。
イオンスタイルとして新たな時を刻み始めたばかりの旧・ダイエー碑文谷店。今後も、開店時に碑文谷の人々を驚かせることとなった魅力的な店づくりを継続しておこなっていくとともに、新たな顧客となりうる人々に対して「生まれ変わった姿」を広く発信し、イオンスタイル碑文谷の「ファン」を増やすことができるかどうかが成否を握っているであろう。
高級住宅街・碑文谷で新たな歴史を刻み始めたイオンスタイル。 再び地域の人から親しまれる店舗となることができるだろうか
<取材・文・撮影/
都市商業研究所>
【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「
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