ただ、厳密に資産全体のバランスで4つの分散のすべてが均等であった場合、少々リスクを取りすぎているのではないかという見方もできるだろう。言い換えれば、投資先の2分の1が海外となっている。そこで、もう少し保守的な配分について、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏から新たにもうひとつ提案してもらった。
「公的年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産配分を模範とするのはいかがでしょうか? 具体的には、国内債券=62%、国内株式=13%、外国債券=12%、外国株式=13%の比率。本当は短期金融資産に5%の配分があるのですが、各資産に1%ずつ上乗せ(国内債券のみ2%)しています」
ここ数年、GPIFの運用は赤字だったと特に野党は批判を強めたものの、何十年ものスパンで運用するのが大原則の年金原資に関して、その発想はあまりにも近視眼的で愚の骨頂だ。先でも触れたように、4分の1ずつ均等というもっと積極的な配分でも過去には好結果が出ているのだ。
また、このGPIF式の配分を実践する場合も、山崎氏が指摘していたように期待リターンの高い投資対象(国内・外の株式)をDCやNISAに割り当てるようにし、期待リターンの低い(概してリスクが低い)投資対象は一般口座を選択するという配慮も欠かせないだろう。あくまで、保有している資産の運用がトータルで好成果を収めることをめざすべきである。
さて、ここまで紹介してきた深野氏の資産配分も、基本的にそれぞれインデックス(市場全体の値動きを示す指数)への投資を前提としたものだ。しかしながら、国内株式に関してのみ、深野氏はインデックスへの投資に懐疑的な見方を示している。
「指数算出上の要因があるとはいえ、日経平均と比べてもTOPIXのパフォーマンスは芳しくないのが実情です。日本株に関しては、過去の実績を手掛かりにTOPIXや日経平均に対して比較的コンスタントにアウトパフォームしているアクティブファンドを選択するのも一考かと思われます」
無論、その際にも信託報酬をチェックし、きちんとコスパを見極めることが不可欠だろう。吊られた男氏が完全に“ほったらかし投資”のスタンスで、日々の相場のことが気にならないというのも、着実に市場平均の実績が得られるインデックスファンドへの投資の効用でもある。しかしながら、平均点以上は稼げないことに焦れる人がいるのも確かである。結局のところ、投資の判断には論理面だけではなく、自分自身の気質も関わってくるわけだ。
・適度なウエートで的確なリスク資産に投資すべし
・年率0.4%以上の運用管理手数料の商品はNG
・最後は倫理ではなく自らの気質を信じるべし
世の中、いいことずくめでデメリットがまったくないという話は、ほとんど詐欺に近い。国が手厚い税制優遇措置を設けているDCにも、当然ながらデメリットがある。最大の難点は、原則として60歳まで解約・換金ができないルールになっていることだ。
なぜなら、運用で得た資金は、あくまで年金として使ってもらうことを目的としているからだ。もっとも、最近は老後破産の問題が取り沙汰されているが、「万一、自己破産してしまった場合も、DCで蓄えた資産は没収されないので安心」(吊られた男氏)であることも確かである。
一方、運用は完全に自己責任で、下手をすれば掛け金の総額を下回る年金しかもらえない元本割れのケースも覚悟すべきだ。「iDeCo」(個人型確定拠出年金)については、金融機関を自分自身で選ばなければならず、その時点で致命的な判断ミスを犯す恐れもある。自由である半面、責任もすべて自分にあるわけだ。
ただし、自分が選んだ金融機関が経営破綻した場合、それまでに積み立てた分はちゃんと保全されている。自分が積み立てている分は個別管理されているので、これからどれだけ高齢者が増えて現役世代が減ろうが、そういったことに左右されることはない。完全に、自分のために自分の責任で積み立てる年金なのだ。
強調したいのは、手続きが面倒で時間がかかりすぎること。ひと昔前のアナログ時代でも、お役所仕事でなければここまでのムダはなかったと表現しても過言ではないだろう。積み立てをいったん休止したり、運営管理機関を変更(移管)したりといった手続きも数か月といったビックリするような時間がかかる。しかも、積み立て休止中も手数料が発生する。移管についても別途手数料がかかる金融機関があるので注意したい。
・原則として60歳になるまでは受け取れない
・運用に失敗すれば元本割れのリスクもある!
・手続きが面倒くさい!移管中に手数料発生も
【山崎元氏】
経済評論家。楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。共著に『
確定拠出年金の教科書』『
難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください』などがある
【吊られた男氏】
個人投資家。投資信託を使った低コストインデックス投資/バイ&ホールドの国際分散投資で資産形成を行う一般サラリーマン。ブログ「吊られた男の投資ブログ」も日々更新中
【深野康彦氏】
ファイナンシャルプランナー。ファイナンシャルリサーチ代表。会社勤務を経て、’96年から独立して現職に。新聞、雑誌、テレビなどで活躍。著書に『
ジュニアNISA入門』、『
いっきにわかる! 金持ち老後のつくりかた』など
取材・文/大西洋平
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