パチンコの還元率を85%として見るならば、売上23兆円のうち19.5兆円は客に還元されていることになる。客の純粋な「負け額」は3.5兆円。ちなみに競馬における純粋な「負け額」は、6458億円となる。売上だけ見れば9.0倍ほどあった差が、客の「負け額」に換算すれば5.4倍となる。
「レジャー白書2016」によれば、パチンコの年間遊技者数は1070万人、平均活動回数は約32回である。1人当たりの「負け額」は年間32万7000円。これを活動回数で割れば、平均して1人1回1万円負けているということになる。もちろんこれは平均値の話であって、もっと「負ける人」もいれば、もっと「負けない人」もいる。それは、他の公営ギャンブルも同じである。
上記のことを踏まえると、一つはカジノ反対派議員が「パチンコ23兆円」(内閣委員会において山本太郎議員は19兆円と言及)だけが突出した数字として、例えば圧倒的に射幸性が高いギャンブルかのように言及するのは、必要以上に不安を煽り、問題を肥大化させる要因になりえる。
これは、指摘する問題点が「ギャンブル性」というのであれば、という前提である。本当の問題は、誰もが(18歳以上であれば)、手軽に出入りが出来る環境にパチンコがあるということであろうし、そういう状況に対して、一般の客がお金を使いすぎる恐れがあるということであろう。
また、確かに公営ギャンブルの還元率は低いが、その売上(利益)の一部は公共事業に還元されている。農林水産省が管轄する競馬の利益は畜産事業に還元されているし、総務省が管轄する宝くじは、地方財政の一助となっている。
パチンコは民間企業が運営しているので、利益はそのまま企業のものとなる。社会において企業が利益を追求するのは至極当たり前のことであるし、その利益の一部は税金として社会に還元されるのであるが、国税庁が発表する「1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」の上位に、パチンコが毎年ランクインしている限り、社会的な逆風はなかなか弱まらないだろう。
<文・安達 夕 写真・
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