手動の信号にやりたい放題な運転マナー。タイが渋滞の「名所」である理由
正直な話、バンコクでは信号システムが渋滞の最も大きな原因になっているのではないかと筆者は考えている。信号の切り替えがあまりにも非効率なのだ。
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タイでは朝から深夜まで、警察官が交差点のボックスに入り手動で信号を切り替えている方式のものが多い。ボックスから見えない場所にはカメラを使って監視し、先も見て切り替えてはいるのだが、担当官の感情が介在するので結果的に渋滞が増長されてしまうのだ。
なにより、向かい合う直進が青にならず、バンコクでは一方向ずつ青にする。つまり、四差路においては一度赤になったらほかの3方向がそれぞれ青になるのを待たなければならない。仮に青が1方向たった1分だったとしよう。それでもそこで3分も待機する必要がある。タノンでは1方向が1分程度では済まないのが現実で、5分以上も交差点で待たされることはごく普通のことだ。
さすがに写真は撮らせてもらえなかったが、ある大きな交差点のボックスを見学させてもらったことがある。交通警察官は組織内ではほぼ末端の存在で、多くが警察署ごとの採用試験で働いている下っ端の公務員になる。いい意味でも悪い意味でものんびりしたタイ人男性で(タイでは女性警察官は事務職が多く、外勤の女性はほとんどいない)、自分の感覚でスイッチを押して信号を切り替えていた。ちなみに、インタビュー中は話に夢中で一度も信号を切り替えなかったほどだった……。
せめて向かい合う双方向で青にした方がいいのではと言うと、その点の問題は認識していた。しかし、「何十年もこのシステムで来てしまった以上、今方式を変えることは大混乱を生じさせることになる」 と、消極的な答えだった。
ただ、郊外ではボックスに警察官を置かずに完全自動化をしている交差点も増えている。その中には双方向を青にするシステムも導入されてきており、一度どこかのタイミングでタイ全土のシステムを変えても思っているほど大きなトラブルは起こらないのではないだろうか。
国によって交通ルールやマナーは違うものだが、バンコクは特に改善の余地がたくさんあり、もっと快適に過ごせる都市になると思う。世界的に人気のある街でもあるので、あと少しでも渋滞が改善されればさらに多くの外貨も獲得できるはずだ。しかし、これといった手を打たないマイペースさもまた、良くも悪くもタイ人らしさであるとも言える。
<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:
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たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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