手動の信号にやりたい放題な運転マナー。タイが渋滞の「名所」である理由

2.ざっくりした運転マナー

 タイ人ドライバーのマナーも悪い。東南アジアの中ではマシなほうかもしれないが、交通ルールに関するマナーや常識が著しく欠如しており、渋滞をさらにひどくさせている。  例えば、合流点や交差点では我先にと頭を突っ込む。青信号で前が詰まっていてもできる限り交差点内に侵入する。交差点に入ってしまえば赤信号になっても信号無視には問われないからだ。合流点も先頭で一台ずつ交互に合流していけばスムーズになるにも関わらず、タイでは手前からどんどん入っていく。車が交わるポイントが増加するので、より時間がかかってしまう。

飲酒運転でも罰金5000バーツ(約1.5万円)程度で、普通の交通違反はせいぜい400バーツ(約1200円)。罰金を払いに来ても反省はなくにこやか

 それから、警察官が見ていなければなんでもありということも渋滞の原因になる。一方通行では逆走も平気でする。高速道路では降り口を間違ったからと路肩に停車し、バックする人も少なくない。  運転免許取得はすべて免許センター(タイでは陸運局内にある)での試験になる。一応教習所もあるが試験対策を教えるだけに過ぎない。筆記試験はパソコンを使ったマークシート方式で、実技も発進・停止、縦列駐車、幅寄せくらいの基本中の基本のみ。かわいい女のコには試験官も甘いなど無茶苦茶である。

路上教習で試験に備えるが、このように縦列駐車などの基礎しか練習しない

 これでも良くなった方で、タイは2003年まで更新不要の生涯有効運転免許だった。つまり、普通車免許に関しては現在31歳以上の人の中には更新不要の免許証を持っているのである。免許更新時にはタイでも新しい交通法規や運転マナーのビデオを見せられるのだが、この免許を持っている人は、そうしたビデオで紹介されているような常識や新しい交通法規でさえ伝わっていないのである。  そして、タイ人は基本的に個人主義だ。混乱を招いてでも得をするなら実行してしまう。これではマナー悪化は改善されず、それによる交通トラブルで渋滞がひどくなるばかりだ。
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非効率的な信号
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