「ストレスチェックテスト」初年度で、現役産業医が本当に伝えたかったたった1つのこと

現役産業医がストレスチェック制度で伝えたいこと

 ストレスチェック制度が始まって1年が過ぎました。ストレスチェックテストによって、会社におけるメンタルヘルス不調者が本当に減ったという医学的なエビデンスはありません。私は産業医として新制度の導入にあたり、自分のクライエント企業に何度も伝えていることがあります。  それは「ストレスチェック制度により組織としてメンタルヘルス不調者が減るかはわからない。しかし、各自が自分のストレス具合、心の健康具合を年に1回チェックする“きっかけ”にはできる。この“きっかけ”を、上手に使うことが大切です」と。
武神健之氏

武神健之氏

 ストレスチェック制度は各自が自分のストレス具合や心の健康について考える、年に1回のきっかけなのです。そして、上長たちにとっては自分の部署のストレス具合を知ることにより、自分の部署でのコミュニケーションについて真摯に学ぶいい“きっかけ”ともなりました。  受検率や高ストレス者率などに一喜一憂するよりも、この“きっかけ”としての活用ができたか否かが大切だと思います。高ストレス者もそうでない人も年に1回、自分のストレスについて考えたとき、人によっては専門家(産業医、医師、カウンセラーなど)に話を聞いてみたくなることもあります。  上司として自分のコミュニケーション手法やリーダーシップについて考えたとき、再度学びを得たく感じることもあります。このようなときに社員が気軽に活用できる“もの”(面接指導だけでなく通常の産業医面談、管理職研修等)を用意できていた企業は実際にやってみて“いい”ストレスチェック制度になったと思います。 <TEXT/武神健之> 【武神健之】 たけがみ けんじ◯医学博士、産業医、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。20以上のグローバル企業等で年間1000件、通算1万件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を行い、働く人のココロとカラダの健康管理をサポートしている。著書に『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣 』(産学社)、共著に『産業医・労働安全衛生担当者のためのストレスチェック制度対策まるわかり』(中外医学社)などがある
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