「ストレスチェックテスト」初年度で、現役産業医が本当に伝えたかったたった1つのこと

高ストレス者の面接指導希望者は2~3%

 実際の高ストレス者の割合(高ストレス判定者÷ストレスチェックテスト受検者)は8~18%と開きがありました。厚生労働省の試算では高ストレス者の割合は約10%でしたので、ほぼその通りとも言えます。これについても、解釈はさまざまに可能なので、来年の自社データとの比較以外には他者と比較として語ることは何もないというのが、私の感想です。  この制度では高ストレスと判定された者には実際に医師との面談である面接指導が勧奨されるのですが、高ストレスにも関わらず面接指導を希望した社員がいない会社もありました。(制度実施中のため)最終的な数はまだ出ていませんが、多い会社でも面接指導は高ストレス者の中の10%もいない、高くて2~3%程度というのが率直な印象でした。  実はこれには理由があります。体の健康診断に比べ、心の健康診断の結果は、誰もが他人、特に会社には見せたいとは思わないもので、プライバシーのより高いものであるということは、数々の裁判事例でも認められていることです。しかしながら、ストレスチェック制度の指針では「高ストレス者が面接指導を希望した場合、その従業員は自分のストレスチェックテストの詳細な結果を会社に開示することに同意したとみなしてよい」となっています。  自分のストレスチェックテストの結果内容を会社に開示してまで、自分のストレスについて医師に相談したい人以外は、よほどのことがない限り、面接指導に手を上げないことは初めから予想できたことでした。なので、こうなることは、制度開始時からわかっていたことでした。

高ストレスと判定された人の3つ選択肢

 そこで私は、自分の産業医先企業においては、高ストレス者に対しては、以下の内容を含めた通知をするようお願いしていました。その内容とは下記のようなものです。 高ストレスと判定された方は、3つ選択肢があります。 1.面接指導を受ける。必要に応じて就業制限をすぐにかけますが、面接指導を希望した場合、あなたのストレスチェックテスト結果は会社に開示されます   2.通常の産業医面談(武神医師)に申し込む。毎月の産業医面談に健康相談としてお申し込みください。ストレスチェックテストの結果は自分で持参してください。会社があなたのストレスチェックテスト結果を知ることはありません 3.自分で対処する。街のメンタルクリニックやカウンセラーへご相談ください  その結果、全てのクライエント企業において、上記の1の面接指導希望人数よりも、上記の2のストレスチェックテストを受けての産業医面談希望者人数の方が多かったです。  実際に面接指導をした高ストレス者で、翌月の産業医面談をお勧めした人は数人いましたが、それよりも重症と思われ、就業制限を設けたり、街のメンタルクリニックの受診を勧めた人はいませんでした。一方、受検後に産業医面談に来られた方の中には、メンタルクリニックの受診を勧めた人、翌月の産業医面談をお願いした人、本人の同意のもと会社にある程度の状態を開示して就業制限をかけた人たちがいました。  この人たちは仮に会社が(結果が会社に開示される)面接指導の案内しかしていなかった場合は、面接には来なかった可能性もある人たちです。ですので、テスト結果を会社に開示されない通常の産業医面談についても同時に案内できたことは1つの成功点と、自信を持って言えるでしょう。
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ストレスチェック制度の成功例
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