「ストレスチェックテスト」初年度で、現役産業医が本当に伝えたかったたった1つのこと

ストレスチェック制度の成功例

 個人的な見解ですが、面接指導を希望された高ストレス者には、会社に何か訴えたい・伝えたいという意思をもつ人が多かった印象です。また、ストレスが多くて本当に医療的なサポートを必要とするような人は、結果が会社に開示される面接指導ではなく、開示されない通常の産業医面談を選ぶものだということも確認できました。  他にも、「この会社のストレスチェック制度はうまくいった!」と、思えることがいくつかありましたので2例、紹介させていただきます。  ある企業(従業員数約300人、受検率約50%、高ストレス率約13%)では、高ストレス者と判定された女性がすぐに産業医面談を求め人事に連絡しました。ところがその月の産業医訪問は終わった直後でしたので、次の産業医面談は約1か月後となってしまう状況でした。  受検後すぐに申し込みがあったこと、申し込みの電話の従業員の声に必死さ(切実さ)を感じたこともあり、電話に出た人事担当者はこの社員に「私でよかったら話を聞かせてください」と言いました。その後、この人事担当者の方が社員の話を聞いてみると、ストレスが溜まって調子がおかしいとわかっているものの、誰にも言い出せなかったことなど1時間以上も色々と話をしてくれたようでした。街のお医者さんを受診することも軽く勧めたそうですが、無理強いすることなく、次回の産業医面談を強く勧めてくれました。  私が翌月この社員と産業医面談すると、先月に人事がたくさん話を聞いてくれたことがきっかけとなり、ストレスやメンタル不調がなくなったわけではないが、少しずついい方向に向いているとのことでした。私は面談後、再度翌月の産業医面談を勧めました。    嘱託産業医は常勤ではありませんので月に1回(から数回)しかクライエント企業を訪問しません。そのような中で、産業医がいない時でもしっかりと社員と向き合ってくれた人事担当者がいたことは産業医として、このクライエントをとても誇りに思った瞬間でした。

管理職研修のきっかけにも

 ある企業(従業員数約700人、受検率約60%、高ストレス率約18%)は、ストレスチェックテストの集団分析結果を、管理職研修のきっかけとして上手に活用しました。ストレスチェック制度の集団分析結果は、部署ごとで考えれば、その部署の上長にとっては、ある意味自分にとっての“成績表”のようなものです。集団分析の結果によって、各部署の上長を評価することはしてはならないとされていますが、やはり上長は自分の部署の集団分析結果が気になるようです。  この会社ではストレスの溜まっている社員が多い部署の上長たちをまとめて、実際に私が数回管理職研修を行いました。内容はメンタルヘルス不調者を出さない部門の上長たちが行なっている「みる・きく・はなす」技術についてというものでした(参照)  私自身、産業医として管理職研修は何度も行なっていますが、今回のような“集団分析の結果を踏まえての研修”は、受講する上長たちの受講態度(真剣さ、切実さ)も過去の研修とは全く異なりとても真剣で、なおかつ切実で、研修を担当した講師としてはとてもやりやすい、かつ、やりがいのある研修となりました。  集団分析を行うか否かは企業の努力義務となっています。集団分析を行った企業で、このようにその結果をすぐに上手に活用した企業もありますが、まだ十分に活用しきれていない印象の企業の方が多い気がします。そのような中、しっかりと集団分析結果を活用したこのクライエントは他社でも参考にできるいい事例だと思います。
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現役産業医がストレスチェック制度で伝えたいこと
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