信頼していた資産管理担当者の裏切り、そしてガン。一世を風靡した芸術家を襲った不運
ケン・ドーン氏は2016年、自伝「A Life Coloured In」を出版 、南極ツアーにも出かけた。
「素晴らしい大自然があった。ワンダフル。そのときの絵がこれだよ」
そう言って手元の引き出しを開き、原画をぱらぱらと無造作に取り出した。
「ペンギンだよ」
この点々とした黒い棒が?
「そうだよ、見たままではなくて、感じたことを絵にするんだ。フィーリングだ。自分のフィーリングを描く。そのとき何を感じて何を思ったか」
Ken Done official site>
【沢木サニー祐二】
オージー文化評論家。国際調停人。講談社で『週刊少年マガジン』、『科学図書ブルーバックス』などを手がけた後、渡豪。日本経済新聞シドニー支局現地記者(2013-15)、ニューサウスウェールズ州治安判事、オーストラリア全国調停人協会認定調停人、英国仲裁人協会会員。著書に『「おバカ大国」オーストラリア – だけど幸福度世界1位!日本20位!』 (中公新書ラクレ)、『潜水艦 Option J いつか浮上へ: 海外に挑もう がんばれ日本ビジネス』(KDP)など
芸術について語るとき、別人のように瞳がきらきらと力に満ちる。南極を描いたシリーズは個展でほぼ完売した。自伝には楽しく笑えるエピソードがたくさん詰まっている。なにかが吹っ切れたのだろうか。
芸術家ケン・ドーン氏はパワーを少しずつ取り戻しつつある。
<取材・文・撮影/沢木サニー祐二 作品画像/Penguins and people III 2015, oil on linen, 122 x 97 cm via
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