実はこの化隆、以前は銃の密造で悪名高かった。「化隆造」は一種のブランドとさえ言われ、
警察が発行する雑誌「人民公安」にも「我が国三大拳銃密造地域のひとつ」と名指しで記載されている。その歴史は古く、1900年代前半に蒋介石の部下で「青海王」の名で知られた軍閥の長、馬歩芳が兵器産業を育成したのが起こりと言われる。
化隆の拳銃密売業者(中国「新商報」より)
化隆は海抜3000mの高地にあるため作物も育ちにくく、他にめぼしい産業もなかった。農民の平均月収が500元を下回る中で五四拳銃(別名「黒星拳銃」と呼ばれる旧ソ連製トカレフのコピー品)を一丁売ればすぐに
数百元の現金収入があるとなれば、生きるために仕方ないという面もあったのだろう。
しかし蘭州ラーメンのブームはそんな彼らの経済を変えた。いまや売り上げは全国で年間18億元にも達し、
県全体の収入の70%を関連産業が占めている。地元警察によれば、近年密造拳銃の検挙数は減少傾向であるのは、当局による摘発増だけでなく、ラーメン産業によって住民の収入が上がり、わざわざ危険で違法な産業で身を立てる必要がなくなったためとのことだ。米軍はアフガニスタンで麻薬の原料であるケシを栽培する農家を罰するだけでなく、サフランやトウモロコシなど、他の収入の手段となる作物の種を提供したり栽培方法を教えることで産業構造を転換した例がある。しかしB級グルメの花形であるラーメンのもたらした収入が地域経済全体を合法化に向かわせたという話は面白い。