職場のハラスメントが減らない2つ目の理由は、それは職場の中には自分自身がストレスややらねばならない仕事でいっぱいいっぱいで、自分のしていることが見えていなかったり、自分の中の思いやりの心に気づく余裕がない人が多くいるということです。
この人たちの中には、無意識無自覚のうちにハラスメントを行っている人たちもいますし、同僚がハラスメント被害を受けていることを見て見ぬ振りしていたり、気づく余裕がなかったりと、後になって後悔している人たちも多くいることを、私は産業医として経験しています。
人は自分に余裕がないと、なかなか他人に優しくはできません。個々の社員のストレスの軽減もハラスメントを避けるためには必要です。
若い社員の間では、「A部長は当たり、B部長はふつう、C部長は外れ、D部長は御愁傷様」など、部下になる前からどの上司がハラスメント上司か等の情報が伝わっていることが多くあります。
一方、人事部の中でも「あの部長の下に配属される人はすぐにメンタルヘルス不調になる」と認識されている上司もいます。たいていの場合、「原因は上司のパワハラ」などの原因までわかっていることが多いです。しかし、その部門の人事担当者に、「部長の上司にそのことを伝えないと」と産業医として何度提案しても、何も変わらない会社もあります。
理由は色々あるのでしょうが、ハラスメント加害者のことを複数人が認識していても対処しださないことは、私は個人をこえて会社としての責任だと思います。
職場のハラスメント対策は決して犯人探しではなく、組織運営や企業文化の課題として扱われるべきでしょう。しかし実際は、なかなか進んでいないのが現状で、そのために今回のような悲劇が繰り返されていると考えます。
職場のハラスメントが減らない理由の3つ目として、あえて私は「パワーハラスメント」という言葉の普及をあげたいと思います。