その事が顕著になったのが、2014年に起きた「セウォル号」事件である。
4月16日、韓国仁川から済州島へ向かっていた大型旅客船「セウォル号」が転覆沈没し、修学旅行中だった学生らを含む295人が死亡、9名が行方不明となっている韓国史上最悪の大惨事である。孫氏率いるJTBCは、事件をどのメディアよりも詳しく報じた。この報道において、JTBCの特別取材チームは「韓国記者賞」を受賞するなど、報道部門において韓国国民から絶対の信頼を得ることになる。
その結果、2013年には「裏切り者」となった孫石熙は再び、「一番影響力のある言論人」として評価されることとなった。
そして、2016年10月。孫は、韓国全土を震撼させる。
知っての通り、韓国大統領のセンセーショナルなスキャンダルの独占報道だ。韓国の暗部を抉り、国民に報じ、解体していく。JTBCの「ニュースルーム」は過去最高の視聴率を叩き出し、国民だけではなく、大手メディアですら、JTBCの次の一声に注目をしている。そして孫石熙は、一夜にして「英雄」となった。
今回のスキャンダル報道の翌日、孫石熙社長がJTBCの全職員に宛てた次のようなメールが、韓国で注目されている。