しかし、そんな彼が唐突に「裏切り者」となる。
2013年、人気番組であったMBC「視線集中」を降板し、降板のみならずMBCまでも退社。そして彼は、現職でもあるJTBC社長に電撃就任したのだ。そんな彼に世の中の批判が集中した。
「金と権力に心を売った最低な人間」
彼のそばにいた人たちまでもが孫石熙の真意を知ることもなく、ただ落胆し、そして非難した。「一番影響力のある言論人」の称号も、誰もが地に落ちたと思い疑わなかった。
日本でいうところでは、池上彰氏がテレビ東京の選挙特番キャスターを降板し、日テレ子会社の社長に就任したようなものである。ただ孫氏はフリーの池上氏とは違い、MBC専属として国民的人気を誇っていたため、視聴者の嘆息ぶりは計り知れないものであった。
それでもなお孫石熙は言い訳もせず、自身の行動についての説明もしなかった。
しかしその頃、世の中は徐々に気付き始めた。彼の報道姿勢は何一つ変わっていなかったことを……。