ついに定まった一群の人々による「改憲への照準」――シリーズ【草の根保守の蠢動30回】

 なにも、「護憲側は9条を守れというお題目を唱えれば改憲を阻止できるという思考に凝り固まっている」と揶揄したいのではない。議論がかみ合っていないのは、改憲勢力側もだ。どうも、改憲への賛否を問わず、改憲議論に参加する人々の焦点がずれているように見えて仕方ない。  月刊誌『正論』4月号は、興味深い特集が組んだ。題して「緊急大アンケート!緊急事態条項か9条か、それとも…論客58人に聞く 初の憲法改正へ、これが焦点だ」。まるで憲法改正が規定路線であるかのようなタイトルを、参院選の数ヶ月前につけていることも注目に値するが、何よりも、このアンケートへの回答がすこぶる興味深い。  このアンケートに答えたのは、江崎道朗、大原康男、ケント・ギルバート、櫻井よしこ、八木秀次、渡部昇一などなど、おなじみの保守論壇人総勢58名。4月号の正論は3月初頭に発売されている。3月初頭発売の月刊誌だから、アンケートが実施されたのは、2月のことだろう。つまり、58人の保守論壇人は、参院選半年前の2016年2月の情勢を踏まえて、回答しているわけだ。  58人のうち圧倒的大多数の回答は、「9条を改正すべし」もしくは「全文を改正すべし」のいずれかで足並みが揃っている。当然の事だろう。戦後このかた、改憲議論といえばこの2点が焦点であったのだから。回答者はそうした議論の流れを改めて踏まえて見せたに過ぎない。  だが、二人だけ変わった回答をしている人物がいる。  高橋史朗と百地章だ。もうこの2人に関する説明は、本連載の読者には必要ないだろう。高橋も百地も日本会議の本体であり、我が国の右傾化運動を40年以上の年月に渡ってリードしてきた「生長の家学生運動」出身者たちのグループ=一群の人々=の中核メンバーだ。両名ともに、生長の家学生運動出身者として、現在も日本青年協議会の幹部として活動している。いわば同じセクトの仲間。左翼で言えば、学生運動出身者が大学卒業後も、中核派や革マル派に所属したまま大学教授をやっている事例と全く同じだ。  同じセクトの仲間である以上、彼らの意見が別れることは考え難い。しかし、高橋と百地、『正論』4月号アンケートには、全く違う回答を寄せているのだ。
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異なっていた2人の回答
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日本会議の研究

「右傾化」の淵源はどこなのか?「日本会議」とは何なのか?