ラオスは決して人口が多いわけでなく、むしろ人口を増やすために中国からの移民を受け入れていると言われているほどだ。また、国際連合が指定する後発開発途上国から脱却できておらず、最貧国と呼ばれることもある。携帯電話普及率は低くなく、急速な加入数の増加が見込めるわけでもない。
本社ビルに入るETLの直営店はお世辞にも賑わっているとは言えない
それでは、京信通信系統控股および迦福控股はなぜラオスに参入するのか。
中国系企業の相次ぐラオス進出によりラオスは中国系企業が活動しやすい環境が整いつつあり、これはラオス参入を後押しした要因のひとつであることには間違いなく、親中外交を進めるラオス政府としても中国系企業からの投資は大歓迎で、それゆえに交渉が円滑に進んだと推測できるが、それだけではない。
京信通信系統控股はETLに自社の設備を納入することで事業拡大が見込める。また、ETLがLTE方式を導入すれば、加入数やデータ通信収入の増加も期待できる。競合のStar Telecomは動画配信サービスのMobile TVやLTE方式の導入により急成長を遂げ、他社との差別化や収益拡大につなげた。ラオスは貧困国で市場規模は大きくないが、事業拡大および収益拡大の可能性は秘めており、市場規模が大きくないからこそ投資額を抑えられるという一面もある。
昨今のラオスと中国の関係に加えて、現状打破のために外国企業からの投資を求めるETLと、事業拡大を目指す京信通信系統控股および迦福控股の思惑が合致したため、迦福控股がETLに出資することが決まったと考えられる。
中国系企業は今後もラオスに積極的に進出してくる可能性は高い。<取材・文/田村 和輝>