社会人こそ要注意! 職場での麻しん感染を防ぐのが困難なワケ

立ちはだかる個人情報の壁

 しかし、ほとんどの会社ではこれが社員にできません。理由はその裏付けとなる法律がないことと病名などが個人情報であり、本人の同意なしに会社が勝手に扱えないためです。  麻しんは感染症法では「五類感染症 全数把握疾患」であり、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出なければならないとされています。しかし、医師も保健所も会社には伝える義務はありません。なので、会社は患者本人が麻しんであることを自己申告しないとわからないのです。  また、学校保健安全法では、麻しんは第2種の感染症に定められており、解熱した後3日を経過するまで出席停止とされていますが、労働安全衛生法をみても会社におけるこのような規則はありません。そのため、熱が引いて、すぐに出勤する社員を止めることは難しいというのが現状です。  一般論としてもし社員が病気で会社を休んだ場合、就業規則などで診断書の提出を求め病名を会社が把握するとは合法的に可能です。しかし、たとえ該当社員の名前を公表しなくても他の社員が麻しん感染者を容易に想像できる形で、社内で公表することは本人の許可なければ、個人情報(個人の医学的情報)の開示となりますので、会社に新たなリスクをもたらします。

危険なのは妊婦さんへの感染

 では、全社員だけではなく、社内の妊婦さんにのみ、麻しんにかかった社員がいることを公表するのはどうでしょうか? 実際、私の産業医クライアントには麻しん感染者本人の同意のもと、そのようにしている会社もあります。しかし、これも万能ではありません。  第1に、すべての妊婦さんが会社に自分の妊娠を早い段階で伝えるとは限らないからです。12週位の安定期に入ってから、上司や人事に伝える方はたくさんいます。会社が把握していない妊婦さんは同僚の麻しん情報を教えてもらえないわけです。  第2に、会社に教えてもらったとしても、それ以降は在宅勤務などが可能であれば対処できますが、在宅勤務ができない場合は有給休暇扱いなのでしょうか?そのようなことを明記する就業規則を私は見たことがありません。また、最悪のケースとして、会社に教えてもらった時点で、既に感染してしまっている可能性もあります。  それではどうしたらいいのでしょうか。実は、麻しんから身を守る方法はあります。
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麻しんから身を守るためにできること
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