EU体制維持のために浮上した「2速度の欧州」論。しかしそれでも問題は山積み

「2速度の欧州」を象徴する動き

 そして、この「2速度」を象徴するような動きが9月9日に起きた。ギリシャのチプラス首相の呼びかけによって南欧首脳会談(EUMed)がアテネで開かれたのである。参加したのはフランス、イタリア、ポルトガル、スペイン、マルタ、キプロスそしてギリシャの7か国の首脳である。EU加盟の南欧諸国は一般に経済力の弱い国とされている。すなわち、2速度の「遅いほう」の速度を適用される国々が集まったのである。  スペインの国民党のラホイ首相はこの会談への出席を辞退した。その代りに、経済次官を送った。出席を辞退した理由は、他6か国の首脳はどこも左派政権で、この開催にEU議会の保守派政党が批判しているのを配慮したものであろうと推察されている。この首脳会談の目的は次回スロバキアのブラチスラバで開催されるEU会議に南欧加盟国の間で共同歩調を取ろうとするものである。この会談で経済成長するための政策の必要性、難民問題に対して共同で責任を負う体制、ヨーロッパで拡大している反体制派ポピュリズムの動きを抑える対策などが協議されたという。
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「2速度」でも打破できない現実
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