以上の経済問題を抱えた上で、レンツィ首相は上院の改革を実行したいと望んでいる。それによって、政権は安定し、法案の承認などもより迅速にできるようになる。イタリアの議会制度というのは下院と上院とが対等の権利を持っているのである。例えば、上院でも内閣不信任を審議にかけ、決議する権利が付与されているのである。その為、下院で決議が出されても、上院がそれを不服としてまた審議にかけることが出来る。下院と上院の両方で審議を可決させるには両院で与党は充分な議席の確保が必要となって来る。
この重複した上下院制を廃して、下院だけが最後の立法の決定権をもつ制度に変える。その為に、上院をこれまでの315議席から100議席に縮小し、その議員も地方から代表が選ばれるとした改革案をレンツィー首相はイデオロギーが相反する大物議員ベルルスコーニ議員に協力を仰ぎ、議会で可決させた。そして、11月にそれを国民に問うとしたのである。
この国民投票でNOが勝利した場合は一気に政治危機に陥る可能性がある。そして、仮にM5Sが政権に就くようになると、Italexitにまでもって行かれる可能性が現実味を帯びてくるのである。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身