藻谷浩介が現場を歩く「里山資本主義」――八戸市の大成功事例

朝市と飲み屋街の相乗効果で「滞在型」の観光客が増える

 朝市は相乗効果も生んでいる。金融街や行政施設に近い八戸市中心部には、レトロ風の飲み屋街「みろく横丁」がある。’02年の新幹線八戸駅開業に合わせて作られたこの横丁は、深夜まで地元住民や観光客で賑わっている。ここでは地元産食材の提供や新名物料理・郷土料理の紹介だけでなく、街の情報発信基地の役割も担う。夜の街で地元の人と接することで八戸の魅力を知り、翌日の観光に活かすことができる。 「それだけでなく、八戸の将来を見据えて『若手起業家を育てたい』という目的もあるんです」(町田氏)  この横丁の特徴は「数年ごとに出店者が入れ替わる」というシステム。店を始めたい人たちが低予算で開業でき、料理の審査も行われるので、客も安心して入れる。ここで育ったオーナーが周辺に自分の店を開くことで地域の活性化にもつながっている。また、横丁全域がバリアフリーで車椅子用トイレも完備。盲導犬などの同伴も可能だ。
みろく横丁

みろく横丁の居酒屋で地酒や郷土料理を味わう藻谷氏(中央)。オーガニック食材を使用した店や、若い女性経営者のいる店も多い

「八戸港の日曜朝市に行くには、八戸市内に泊まる必要がある。すると、夜はみろく横丁で飲む、という観光パターンができます。通過するだけではなく、複数スポットをまわって地元にお金を落としてくれる『滞在型』の観光客を増やす効果があるのです」(町田氏)
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地元の人ほど、地域の魅力に気づいていない
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里山資本主義

課題先進国を救うモデル。その最先端は“里山”にあった!!