世界シェア90%超! 手書き入力技術のトップランナー

ペンタブレットにとどまらない展開

 ワコムはユーザー向けのペンタブレットにとどまらず、その技術をモバイル機器用に最適化したペン入力用部品のソリューションに落とし込み、WindowsやAndroidのタブレット端末、スマートフォンのIT企業向けに提供している。これらのOEM事業も売上の3割を占め、非常に重要だ。たとえばサムスン電子のスマートフォン・Galaxyシリーズの電子ペンはワコム製。そのほか、クレジットカードの署名を液晶画面に書き込むサインタブレットと呼ばれる端末もワコム製品であることが多いという。手書き入力技術は様々な業界で活用され、今後も大いに発展していく技術と目されているのだ。 「PCへの入力は長い間キーボードとマウスでしたが、タブレットが登場し、winsows10もスマホのようなタッチ志向のインターフェースに変わってきていますよね。入力ツールとしてペンの重要性が上がってきていると感じています。これはワコムにとって追い風でしょうね」  ワコムではクリエイター向けのタブレットだけではなく、一般のユーザーが幅広くデジタルペンを活用できるようにするための取り組みも行っている。いわば、誰もが使っている(アナログの)「ペンと紙」を、デジタルの世界へ移行するもので、「デジタル文房具」といえるかもしれない。『Bamboo Spark』は、同社のデジタル文房具第一号機だ。 「弊社の『WILL(Wacom Ink Layer Language』というデジタルインクの技術を活かしており、手書きストロークの一本一本を書いた順番も含めて記録しています。手書きで入力した文字をテキストデータへの変換することも可能です。メモがデジタル化されることは、単に利便性をアップさせるだけではありません。クラウド経由で世界中の人たちと共有できるようになり、同時に書き込むこともできる。たとえば世界で同時に同じホワイトボードを使うような感覚です。誰もが使うペンと紙がデジタル化されることで、これまでにはなかったベネフィットが提供される。その可能性は文房具の未来、ひいてはオフィスワーク、教育、趣味、コミュニケーションなどの未来を変えていくかもしれません」  ひとつの技術を、新たな技術へと発展させ、イノベーションを生み出す。それがユーザーを惹きつけて、業界を牽引していくのだろう。 <取材・文/江沢洋>
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