2000年ころになると、PCの普及と共に、ペンタブレットも一般ユーザーに普及し始める。
同社も『FAVO』などの普及機をリリース。現在、ユーザー数はプロクリエイターよりも一般ユーザーのほうが多くなっているほどだ。他社からはワコム製品より安価な製品が登場しているが(約3分の1の製品さえある)、それでも圧倒的なシェアは揺るがない。
ここ10数年、日本の大メーカーでさえ苦境を迎えているにも関わらず、ワコムが20年にわたって業界トップを確保し続けていられるにはなぜなのか?
「技術を特許で守っている部分もあるのですが、特許は20年で有効期限が切れてしまいます。重要なのは、その特許の上に膨大なノウハウが乗っていることで、20年前の特許を使ったからといって、ワコムと同じものは作れないし、追いつくこともできないのです」
またペンタブレットが趣味性の高い機材であるというのも関係している。
「ペンタブレットは必需品ではなく、あくまで趣味の品です。それだけに、“安さ”よりも“良いアウトプット”への欲求が非常に強いのです。筆圧もワコム製品はハイエンド機種では2048段階まで対応し、触るか触らないかという微妙なストロークも検知します。だからこそ、繊細なタッチを再現できますし、デジタルであることに違和感を感じない。それがクリエーターの支持を得ているのだと思いますね」